今年も12月10日に冬の「青春18きっぷ」が解禁となりました。
この冬、私にはぜひ乗っておきたい列車がありました。それは急行「きたぐに」。というのは、来年の3月のダイヤ改正でどうやらふたつの夜行列車-「日本海」と「きたぐに」が廃止になるらしい、という情報を耳にしており、このうちまだ「きたぐに」には乗ったことがなかったのです。
ということで、私は「0泊2日」で、18きっぷと夜行列車「きたぐに」を組み合わせた旅に出ることにしました。
まずはみどりの窓口に行き、新潟発の「きたぐに」のきっぷを手配。クラスは寝台車のほか座席の指定席と自由席がありますが、お財布と相談のうえ座席指定席を予約しました。
そして次に考えなければならないのは、「きたぐに」乗車の前後の行程です。私が18きっぷで旅をするときに決めている条件には次のふたつがあります。
① 1日あたり1ヶ所以上はミュージアム(美術館・博物館)に行く
② 1シーズンあたり1路線は未乗車路線に乗る
「きたぐにの発車にあわせ、夜22時までに新潟に到着」という条件はかなり自由度の高いものなので、その間にいける美術館はいくつも考えられます…高崎、長野、あるいは富山…。しかし問題は②です。新潟までいくには上野から高崎、水上、長岡経由が最も便利ですが、このルートはこれまでも繰り返し利用しており、できるなら違うルートで行ってみたい。
結局、前日の夜まで悩んだ私は、下記の行程で旅をすることにしました。このうち磐越東線と磐越西線(一部区間)が見乗車となっていました。
1日目
東京~新潟
利用する路線:常磐線・磐越東線・磐越西線・信越本線
訪問するミュージアム:水戸芸術館「清川あさみ 美/女/採/集」
夜行列車 急行「きたぐに」
2日目
京都~東京
利用する路線:東海道線
訪問するミュージアム:リニア・鉄道館、静岡市美術館「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」
旅の初日。
まずは常磐線の各駅停車で自宅最寄り駅を出発し、松戸まで向かいました。

ここで快速列車に乗り換えました。

2時間弱で水戸に到着。
ここで一旦下車し、ホームのおそば屋さんで朝ごはん。
ちくわ天そばがおすすめのようでしたので、それに素直に従う。

水郡線のホームにはカラフルな気動車。

水戸駅からはバスで
水戸芸術館まで向かいました。
こちらでは「
清川あさみ 美/女/採/集」を見ました。

清川さんの作品は、2009年に東京都庭園美術館で開催された「Stitch by Stitchステッチ・バイ・ステッチ 針と糸で描くわたし」の作品が強く印象に残っています。
今回の展覧会は、1979年生まれのこのアーティストによる、これまでの仕事に新作を加えた内容になっていました。清川さんは、写真や布を支持体とし、それに刺繍やビーズなどを施した作品を製作されています。
結論からいうと2年前に見た「Comprex/Dream Time」シリーズ-美女のヌード写真に直接ビーズ刺繍によって皺や肥満など様々なコンプレックスが施された作品-が最も優れているという印象をうけました。
この日初めて見た、数十名の女優やモデル、AKBのメンバーを被写体とした「美女採集シリーズ」については、率直に、それほどのインパクトを受けなかったというか、若干のがっかり感がありました。その理由は、支持体となる写真に、すでにCGなどで加工が施されているものが多く、それによって「写真」そのものの鮮度が落ちている気がしたからです。
私が2年前に「Comprex/Dream Time」シリーズから衝撃を受けたのは、そこに「写真」と「針と糸」の緊迫した関係があったからです。写真という「紙」に対して、バロック的な「過剰さ」をともなう糸やビーズによる介入が施されたその作品は、美しさと暴力的を同時にスマートにまとうことに成功していると思ったものです。
しかし、この年齢でこの仕事の量と内容という点については、やはりすごい人なのだなと思いました。
メインの企画展を見た後に導かれるスペースでは、「クオリテム」シリーズの82回目として企画された上村洋一さんのインタレーションを見ました。その作品は、エリック・サティの作品をチャンス・オペレーションシステムによって再構成し、それを楽譜と音というメディアによって表現するというものでした。その楽譜は紙ではなくもっと硬質なパネルになっていて、黒地に白や黄色、緑、赤、青、紫といった色で五線譜が抜かれおり、その数枚を1ユニットとしたモビール仕立てになっていました。
その解説では、不協和音とモビールの揺らぎについて、不安な気持ちを想起させるものと指摘し、そして震災が作家にあたえた影響について言及したあと、しかしながらモビールという構造自体が巨大な衝動を回避することができる「しなやかで強い構造」であることから、この作品がペシミスティック一色でものではないということが述べられていました。
その中では楽譜に用いられている色については特に言及されていませんでしたが、私がなんとなく想起してしまったのは、仏教で用いられる五色の幡や幕。仏教でいう「五色」とはこれは如来の身体に関わる色(髪は青で、身体が黄色など)をあつめたもので、それぞれの色が、如来がそなえる強さや安定性といった要素を象徴しています。この作品に仏教思想が反映されている証拠は基本的にはないと思うのですが、五色のことを思いながら見てみると、様々な意味の広がりが自分のなかに現れてくるのも確かなことでした。そして、そういうことも有、というのが現代美術なのだろう、と自己正当化をしてみたり。音楽に詳しい人が見たらもちろん違う意見が出てくるのでしょうね。
水戸芸術館では、震災で被災したパイプオルガンの修復作業が行なわれていました。
…旅の初日の午前中ですでに語りすぎてしまった感じもしますが、18きっぷの旅はここからが本格的にスタートです。
水戸駅までバスに戻り、常磐線でいわきに向かいました。