3月12日。
春の青春18きっぷの旅、5日目。月曜日。
この日は体調管理のために当初から設定してあった、連泊の中日。
ということで、午前中は持参したジャスミンティーをゆっくりと飲んだり、ビタミン補給にグレープフルーツを食べたりして過ごし、10時頃まで部屋でのんびりしてから出かけました。
まずは松江から山陰本線で安来まで向かいました。


この日最初の目的地は、月曜日でも開館している「足立美術館」です。
美術館は安来駅から離れた場所にありますが、送迎用のシャトルバスが出ています。所要時間は20分ほど。
田園風景のなかを進んでいるとなにらやデジャヴを感じました。そう、これは佐倉の「川村記念美術館」にバスで向かうときの感覚とそっくり。
美術館の外観は6、70年代のプライベートミュージアムらしい印象。

この美術館は美しい庭園で知られています。
順路は、前半は庭の鑑賞ポイント、後半は2階にある展示室に誘導されるような流れになっていました。
チケットカウンターを過ぎると、まもなく庭が現れます。
一部がうっすらと雪化粧していました。

この日は、晴れているかと思うと、急に雪が降り出したりして、庭は様々にその表情を変えていました。
指をさし示して来館者を案内する、創設者・足立全康氏の像。

順路に沿って進むと、和風建築になっている一画にやって来ました。
ここにはちょっと視覚的トリッキーな趣向を凝らした場所があります。
それは、床の間の壁がくり抜かれていて、その向こうに広がる庭園が一枚の掛軸のように見えるというもの。
これには「生の掛軸」という呼び名が与えられていますが、実際には庭園を眺める人々の往来も「絵の中」に入り込んできていますから、絵画というよりもメディアアートというほうが合っているかもしれません。

全体的に丸みを帯びた印象の庭園は、見れば見るほど土田麦僊の「舞妓林泉」を思い出しました。遠方の山も借景とした眺め。

京都の寺社の庭園には近代以降の建造物等によって借景が乱されてしまったところもありますが、ここでは美しく景観が守られているようです。
つづいて2階の展示室へ。
この日は「横山大観VS竹内栖鳳 日本画の二大巨匠が激突!」を見ました。
もともと竹内栖鳳が好きな私なのですが、どうしてもはなから栖鳳を贔屓しつつ観覧してしまいますが、しかしそこはさすがの足立美術館のコレクション、大観の作品も「紅葉」をはじめ名品揃いで、ちょっと大げさなサブタイトルも許せてしまうくらいの名勝負を楽しませていただきました。
もっとも、終盤で見た栖鳳の「雨霽(うせい)」で私は完全に打ちのめされてしまいました。やっぱり栖鳳はかっこよすぎます。
ちなみに、この美術館のガラス窓は、その存在をほとんど感じさせないほどきれいに磨かれていまいした。他のお客さんからは「どうしたらこんなにガラスをきれいにできるのかしら」と言っているのが聞こえてきました。おそらく、私の推測するところでは、額縁用の低反射ガラスを使っているような気がしているのですが…はたして実際はどうなのでしょうか。
本館を出る頃にはあられが降っていました。
庭もみるみるうちにトーンを変えてゆきます。

私はこれまで、この庭園については過剰に人工的である印象を覚え、本当のことをいうとあまり好感を持っていませんでした。しかしこの日は、冬の山陰の不安定な天候にさらされる庭を見て、まるで本物の「自然」と人間が作った「風景」の動的なマリアージュを見たような気がしました。やはり、実際に見に来てよかったと思いました。
その後、現代の日本画を展示する新館を経て、ふたたびシャトルバスで安来駅まで向かいました。
そしてここからは、この日の鉄活動がスタート。
(つづく)