カテゴリ:中之条ビエンナーレ2009( 8 )

中之条駅の近くでは地域のお祭が行われていました。
花笠を背負った稚児さん達、山車の上の少年達。こどもたちが主役のようでした。

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温泉郷美術祭、中之条ビエンナーレ。
地元の方々が非常に主体性をもって関わっているという印象を強く受けました。ガイドさん(今回は町の職員さん)は行く先々で地元の人に声をかけられ、会場スタッフさん(多くはおばちゃんやおじいちゃん)は参加者に「どこから来たの」と声をかけていました。そんな場に生まれる空気は都会からやってきたボランティアスタッフさんではなかなか出せない温かさで、居心地のよさを感じました。

四万温泉には、元禄年間に建てられた日本最古の湯宿建築があります。
山間部にある小さな町のホスピタリティーは一朝一夕のものではないのでしょう。そして、他所から新しく来るものへの好意は、自分たちの土地や文化を愛する心に裏打ちされているのではないか…子どもたちが乗った山車を見上げながら、私はそんなことを考えていました。


中之条ビエンナーレ」では中之条町役場の町長室も展示室となっています。
「中之条ビエンナーレ」のツアーバスは、最終目的地である四万温泉へ到着。
バスを降りると路線バスの停留所、この雰囲気いいねいいね!

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こちらのメイン会場は「旧第三小学校」。
2005年まで使われていたこの学校、門柱やエントランスにさりげなくクラシックな雰囲気があります。

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こちらには21名の作家による作品が展示されていました。
(私は「中之条ビエンナーレ」をまわるうちに、この時点で、このイベントにはかなりの好感を覚えるに至っていました。そこであえて申し上げたいのですが、旧第三小学校では「いいな」と思う作品もたくさんあったのですが、それだけに「…なにこれ(怒)?」と思う何点かの作品が気になりました。)

木彫の作品に興味深いもの多し。
本多恵美子さんの作品など、つくりが丁寧で且つ物語性のあるものがそろっていました。

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ワークショップ形式のものはこのビエンナーレではあまり多くないようなのですが、ビニール袋のパッチワークによる巨大風船は、記録映像のなかで狂喜する子ども達の姿が印象的、そして扇風機の風力だけでキネティックにしていることがまた良い。

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ランチルームに下がる、木村晴美さんの作品。
楽しいランチタイムの始まりだ…赤色が食欲を刺激します。モリモリ食べろよ~。

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梅木隆さんの作品。円形の紙片はかつてここで過ごしていた子ども達の声をイメージしたものとか。実際にそのうちいくつかから声が聞こえてきます。
これらを吊るす糸は、つながりあい、からみあい、菌糸のようにもみえます。
クラスや学校のなかには、好きな子もいれば好きになれない子もいる。でも一年間同じクラスでやっていく。

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音楽室には佐藤未来さんの展示。
展示としてはそっけない感じなのですが、これがしたたかな魔力を持っている。
中之条の人たちに、黄色い日用品を軒先に下げてもらうというプロジェクト。参加者はさらに友人などにこれをひろめてもらい、中之条だけではなく国内各地、海外にも広まる可能性があるというもの。
実際に温泉郷、中之条の町を歩いていると黄色いものを下げている家があちこちにありました。でも困ったことに東京に戻ってきてからも、それらしきものに反応をしてしまう。

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四万温泉では、このほかに四万川沿いの小径、商店街でも作品が展示されています。

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温泉街には情緒があり、四万川は-この日何度も感じたことですが-本当に美しい色をしています。結局この日は温泉に入れなかったので、次回は泊まりで来たいですね。

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(つづく)
ツアーバスで訪れた中之条ビエンナーレ、午後は二つの温泉郷を訪れました。
最初に訪れたのは沢渡温泉、坂道に沿って旅館やみやげ物店がならぶ、小さな温泉郷です。いい感じです。

沢渡ギャラリーでは、赤い糸を結び合わせることによって創られた家型の作品が展示されていました。作者・松枝美奈子さんのことばからは、「家には安心感と脅迫感が同時に存在する」「その安心の根拠は頼りなく細い糸によって不確実に成立するものですがそれは断ち切ることができない」「そこ(家)に留まることはできない=通路である」ということが読み取れます。

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赤い色は血縁をあらわす血の色なのかもしれませんが、その造形はクリスマスのオーナメントのようなかわいらしさがあります。また「家屋の中に置かれた家」というのは童心を思い出させるものです。
したがって、この作品の外見からは作者の言葉ほど重い感じは受けません。しかしそれは良いことだと思います。造形とメッセージとの距離を近づけすぎないことも、この作品の重要な構成要素のひとつだと私はとらえました。

このギャラリーのすぐそばから始まる遊歩道には藤井達矢さんの作品が点在しています。
“かつて「こたつにみかん」は冬の定番だった。消えた団欒…希薄な人間関係…決して郷愁はないが、何かに急かされ、そんな時代の記憶を留めたいと考えた”(展覧会ガイドブックより引用)そして作家は全国の家庭からみかんの皮を集め…。
民家の中に、野外に、クローバー畑のなかにこたつと、炭化したみかんの皮が展開します。

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こののち、四万温泉に向かう途中で甌穴(おうけつ)会場へ。
こちらでは、3人の作家さんの作品が展示されていました。

とはいえ、作家の皆様にはたいへん申し訳ないのですが、実は甌穴の印象のほうが勝ってしまいました。甌穴とは川の流れによって川底で石が回転し、そこが凹状に侵食された地形のことで、この四万の甌穴群には数メートルの直径の穴が8つみられるそうです。
地形の面白さに加え、水の色が感動的な美しさ。岩場はしっとりとした涼風が吹きぬけていました。

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(つづく)
「道の駅霊山たけやま」からバスで数分のところには、農協倉庫を使用した展示スペースがあります。
こちらには蔭山武史さんによる「タクシーで相模原から中之条まで移動するという行為」をめぐる作品が設置されています。

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メーターを写し続ける映像、そして移動した距離分の糸、写真によるドキュメント。
映画にはロードムービーというジャンルがありますが、これはロードアートですね。

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映画といえば、その次に訪れた会場は映画の撮影拠点となった場所。
中学校を利用した「伊参(いさま)スタジオ」は96年制作の「眠る男」のスタッフの拠点・宿舎となった建物で、現在は映画で使用されたセットなども校庭に移築され、毎年秋には映画祭も行われています。

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こちらには17名の作品が展示されています。
比較的軽い素材を使った作品が多いように感じました。

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こちらの作品の中では、色とりどりのコンパスが床に円を描く作品(作家名を控えるのを忘れました)、これはすごく学校らしくていいなと思いました。
子どもたちが教室のなかで一斉にコンパスを描いている。子どもの姿はそこにないけれど、コンパスや色鉛筆の色をみると、やはりひとりひとり違うんだなと思う。

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はじめてコンパスで円を描く経験を覚えている人もいれば、覚えていない人もいるかと思いますが、もしそのときに自分で好きな色の鉛筆を選ぶことができたら、はじめて描いた円はずっと忘れないかもしれません。算数の授業で色を扱うのは少し不自然かもしれないから、図工の先生、算数でコンパスをはじめて使うまえにこのネタを使ってみてはいかがでしょうか?

(つづく)
木造平屋建て、旧五反田小学校は1909年竣工。
「学び舎」ということばがふさわしいような古風な様式の学校です。
こちらでは、藤井龍徳さんと清岡正彦さんの作品が展示されていました。

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藤井さんの作品は、立方体のそれぞれの面に「イ」「ヤ」「ナ」「ン」「デ」「ス」と描かれたサイコロをつくり、それを転がして出たことばを書き連ねたもの。現地での説明をうけ、この学校の子ども達が経験した戦争時代の記憶や感情を着想としたものを理解しましたが、なるほど会場を横切る竹の先は竹槍のようになっています。

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清岡さんの作品は船をテーマとしているようです。
最初の作品は、実際にこの学校に残っていた木船をつかっているのですが、底が平たいことからおそらくお芝居のために作られたセットの一部ではないかとのこと。海なし県の山間部で子ども達が演じたのは、川の物語、それとも遠い海の物語?

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次の作品はもうすこし大型の船。船というより船形のイメージ。そのまわりに集まった漂流物は苔むしていますから、引退した船でしょうか。

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最後の作品はあまり船らしくありません。ケースに閉じ込められた(一部ははみ出しています)白いジオラマが並べられています。ジオラマは海岸線のように見えるものもありますから、もしかしたら私たち自身を船と見立てることも許されるかもしれません。

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ツアーバスが次に向かったのは昼食場所となる「道の駅霊山たけやま」。
こちらにはサクサベウシオさんの作品が、町のシンボル嵩山(たけやま)から人里に下りてきたかのように展示されています(作品を吊るすワイヤーは、もともと端午の節句にこいのぼりを吊るすために使用されているものだそうです)。

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昼食は名物のおそば。これが結構な食べごたえでございまして。
量が多いというよりも、歯ごたえも味もしっかりとしているのでよく噛んで食べているうちにおなかがいっぱいに…という状況になるわけです。仕上げは蕎麦湯で完全に満腹。

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そして道の駅ですので地場産物の誘惑にも素直に応じます。


(つづく)
1885年創業の蔵元、近年まで現役だった「旧廣盛酒造」も展示会場になっています。

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村元崇洋さんの作品。
ススから生まれたのが「まっくろくろすけ」なら、これは麹から生まれたものでしょうか。

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青柳加奈子さんの作品。ペインティングもしっかりとうけとめるスペースです。

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浦部裕光さんの木彫。照明もきっちりしてあります。

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2階には石黒由香さんの作品、2色に塗り分けられた壁、配電盤(?)、壁のヒビとのコラボレーション。

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こちらはお酒の精霊がまだ漂っていそうな会場でした。
なんとなく良い気分で作品を見られたような気が…。


(つづく)
「中田木材」から市街地へかって数分歩くと、展示スペースのひとつ「キリンホール」が見えてきました。
元パチンコ屋さんを会場とした伊藤隆之さんの作品は、このビエンナーレで最も私が衝撃を受けた作品といっていいかもしれません。

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全てのパチンコ台のなかに絵画が描かれています。

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パチンコ屋さんは自分の住む町、隣町、日本全国津々浦々の駅前一等地に場合によっては何軒もあり、そして郊外にも広大な駐車場を有した大型店があり、人々はそれに行列をし、そこで数時間を過ごし、そこでたくさんのお金を使います。それも慣習的に。すごい集客力です。磁場といってもいいかもしれません。
比べてもあまり意味がないことは承知の上ですが、例えば休日を過ごす場所として美術館と比べてしまうこともあります。そして行列する人々にこうつぶやくわけです。
「お客さあん…時間とお金があるならついでに美術館にも来てみてよ。かわいい女の子もいるかもしれないよ(絵の中に)。」

「キリンホール」では台の前に座ると目の前に一枚の絵画。さてどの台を選びましょう。移動もOKです。

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ところで、この作品については支持体の「おおきさ」「かたち」を考えてみても面白い。
このサイズの円形絵画の連作といえば、お寺の天井画です。
アートのトポスのもとに俗と聖が同居…空即是色、色即是空。

(つづく)
「温泉郷美術祭」と銘打たれた中之条ビエンナーレ
出品作家さんからご案内をいただき、行ってまいりました。

青春18きっぷで群馬の中之条まで行き、駅前でツアーバスに乗車。
ツアーバスは2コースあり、土曜日は「温泉コース」、日曜日は「故郷コース」が運行されています。今回は「温泉コース」を利用。いずれも昼食におそばが付いています。
通常は観光バスをチャーターしているそうですが、この日はあまり参加者が集まらなかったとのことで中之条町役場のバスが出動、職員さんが一人で運転手とガイドを頑張っておられました。


10時30分に駅前を出発し10分程で「中田木材」会場に到着。
ここでは13名の作家による作品が展示されていました。
バスを降りると、伊藤知宏さんの壁画の犬がお出迎え、左側の彼は「オッ、来たねえ」という表情。

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この会場で最も印象に残ったのは、敷地中央の広場にある東城信之介さんの作品です。
はじめに地面に置かれた金属板に真上から白い紐が垂れている様子をみたときは、金属めがけて雷が落ちているようで、ついウォルター・デ・マリアの「稲妻が原」を思い出しましたが、近づいてみると、その金属板はちょうど人の大きさくらい。形がゆがみ錆付いているものもあり、まるで天から点滴を受けている負傷者のようにもみえます。
この日は天気がよかったのですが、雨や雷の中で見るとまた違った想像がうまれそう。


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(つづく)
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