カテゴリ:瀬戸内国際芸術祭2013( 19 )

瀬戸内国際芸術祭の旅も終わりに近づいてきました。


男木島、女木島をまわって、フェリーで高松に戻ってきたのは12:30頃。

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空港行きのバスに乗るまでのわずかな時間にて、ふたつの作品を訪問しました。

ひとつは、港のターミナルの中にある磯辺行久のインスタレーション「潮流の中の島々/不確かな風向き(備讃瀬戸)」。

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そしてもうひとつは高松駅の高速バスの待合所の外壁に展示された本間純の「待つ人」です。

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ホテルでスーツケースをピックアップし、バスで高松空港へ。

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空港には、所用時間約45分で到着。地方空港って、実はけっこう駅から離れているところが多い。もう少し主要駅の近くに作ることはできないのかしら…というのは暴論でしょうか。

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空港の中にも作品がありました。

こちらは椿昇「高松うみあかりプロジェクト」の作品のひとつ。内部には光がともせるようになっています。

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ヴェロニク・ジュマールの「ウェルカム」はややミニマリズムっぽいソリッドな外観を持つ作品。ですが、実際には金色のフィルムで作られていて、近づいてみるとかなり軽やかな印象でした。すこし青みがかった空港の空間によく映えていました。

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今回は飛行機を使ったこともあって、陸海空のターミナルで作品と出会うことができました。このように旅の拠点に作品があるのも、アートな旅人にとっては嬉しいものです。


作品ではありませんが、空港内では「フライトシミュレーター」もありました。
面白そう!と思ったのですが…残念ながら故障中とのこと。

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飛行機に乗れば、東京まではわずか1時間あまり。

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あまりにもあっという間なので、到着後はまるで夢からさめたような気分でした。


…また3年後!











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瀬戸内国際芸術祭。
最後に訪れた島は女木島でした。

男木島からはフェリーで20分ほど。
あっという間に到着です。

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こちらの船は高松と女木島・男木島を結んでいます。船体にはそれぞれの島のイメージを表した鬼と灯台が描かれていました。

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船員さん風の帽子を持っているのが可愛いけれど、よく見ると鬼さんがこれを被るのはツノが邪魔してちょっと難しそう。

船は、乗客や車をおろすとあっという間に離岸。高松へと向かっていきました。

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この島の訪問も前回の芸術祭につづき2回目。
桃太郎の舞台の「鬼が島」とされるこの島は、鬼が住んでいたといわれる洞窟が有名ですが、今回は訪問せず。港周辺にある作品を重点的に見ることにしました。

港では年代もののバスを見つけました。どうやら現役のようです。

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行き先表示は非常に分かりやすい。
ナンバープレートの地名は「香」の一文字となっていました。

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行武治美の「均衡」は2010年からの設置作品。納屋の内部に、一万個以上の鏡を吊り下げたインスタレーションです。キラッキラな作品ですが、構成要素が限定されているのでとても見やすい。

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レアンドロ・エルリッヒの「不在の存在」空き家をリノベーションした作品。やはり前回からの設置されているものです。鏡をつかったトリッキーな空間です。

この建物のなかにはレストランやショップもあり、若い人たちでいっぱいでした。たしかに、高松からフェリーで20分、片道運賃は350円ですから、都会で地下鉄にのってお気に入りのカフェやレストランに行く感覚とあまり変わらないかもしれません。

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次の作品に向かう途中では蛸壺を見つけました。
海中の生物が付着していて、使い込んである様子が伝わってきました。

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前回「福武ハウス」として複数のアーティストの作品が展示されていた女木小学校は、今回は大竹伸朗が「女根/めこん」のために使用。

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玄関を入ると、その奥にある庭から極彩色の光が怪しく手招き。

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巨大な赤い物体。

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そしてこれもまた怪しげな建物。中に入ることはできません。

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「女根」。

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どうでもいいけどこの「女」の字が仮に「男」であったら大変なことになる…のかな。まあ別の意味で聖地っぽくはなりますが。


校舎2階の教室では、ミュージックビデオ「女根の月」が上映されていました。

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作詞は大竹伸朗、作曲はEGO-WRAPPIN‘の中納良恵。
この曲は初めて聴きましたが、EGO-WRAPPINらしい「艶のある場末感」むんむんの極上なナンバーでありました。

これにて、今回の旅における島での作品鑑賞は終了。
飛行機の時間にあわせて島を離れます。

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(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、訪問3日目。
男木島の作品めぐりの最後に、昭和40年会による「男木学校」を訪問しました。


入り口には校長・パルコキノシタさんより「入学生のみなさんへ」とかかれた「ごあいさつ」が貼られていました。

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「アートを鑑賞したり遊んで行ってください」とのこと。
…了解!


巨大福笑い。

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会田誠は掲示板を使った作品を展開。

「バーカ」。

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そのフキダシのぬしはツ○ッターを思わせる鳥でした。

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壁に熱弁あり。

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「肉体塾」と名付けられた教室。松蔭浩之の作品。

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大岩オスカールの「鏡の教室」。
説明によれば人口問題にちなんだ社会派作品のようですが、単に自分を見つめ直す空間としても使えそう…一種の拷問に近いですが。

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「貧乳山」。

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小沢剛の「4年2組「ポスターの写真」」。

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こちらでは、数年前まで行われていた、原子力啓蒙のポスターコンクールで子どもたちが制作したポスターを被写体とした写真を展示。モノクロにプリントされることで、それ自体がアート的にも、ジャーナリズム的にも見えてくる。卑近で見過ごしやすい事実を写真で捉えなおすことの効能を感じました。

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調理室のドアの上には恐ろしい言葉をサラッと表示。World War 3。

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校庭にはどんど焼きの残骸のようなものがありました。

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時刻は10時半過ぎ。
11時ちょうどの船で女木島へ向かうため、港に向かうことに。

船に乗る直前、岸壁近くでタコのから揚げを打っていたのでつい購入してしまいました。
プリプリした歯ごたえで至極美味。本当は3本くらい食べたかったです。

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(つづく)









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瀬戸内国際芸術祭、2泊3日の最終日。
この日は男木島と女木島を訪問しました。

まずは高松港発8:00のフェリーで男木島まで向かいます。

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途中、海上にてこんな船を目撃。

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キリンさんが乗っています…前日に見たパンダ船の姉妹船でしょうか。
でも、なんかキリンの顔に雷が落ちそうだなあ。


私が乗ったフェリーは、女木島を経由して、高松から40分ほどで男木島に到着。

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この港にある案内所は、それ自体が作品となっています。
作品名は「男木島の魂」、アーティストはジャウメ・プレンサです。こちらは2010年に設置されました。

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屋根部分の模様は、世界各地の文字をモチーフとしたもの。

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港には矢野恵利子の作品「あたりまえと当たり前と」もありました。
こちらは建物というよりもアッサンブラージュみたいな雰囲気。

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飲食物の販売ブースもありました。看板ではシュールなイラストがお客様を手招いています。

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こちらはTEAM男気(おぎ)の「男気プロジェクト」により装飾された船。恵比寿さんが描かれていました。このプロジェクトでは計7艘の船を使っているそうなので、もしかしたらその他にも七福神が描かれているのかもしれない、と推察。

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墓地の間を抜け、小路を歩いて到着したのは廃校を利用した昭和40年会の「昭和40年会 男木学校」。

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時刻は開場時間のちょっと前。

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…ですが、定刻になっても扉は開かず。
スタッフさんの説明によると、準備に時間がかかっているとのこと。
こういうアクシデントも、多くの市民に支えられた広域型の芸術祭ならではです。
訪問者自身の柔軟な対応力が試されるのもこういうイベントだからこそ、と思うようにしています。


ということで、こちらは後回しにして他の作品を見ることにしました。


とりあえず元来た道を戻ります。
路地の先をゆくのは、小型のバキュームカー。なんとなく吉原治良の初期の作品を思い出す。

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その途中で、達筆な貼り紙を見つけました。

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このような手書きの文字による情報伝達力というのは、活字・印刷(あるはペーパーレスな媒体)によるものとはかなり性質を異にするように思います。現代の社会では活字の文字を大量生産・大量消費することが当然になっているけれど、こういうものを見ると、文字という存在が自分の仕事に誇りを持って機能しているようさえ感じます。より極端にいえば、手書きと活字の差というのは「言霊(ことだま)」がそこに居るか居ないか、みたいなことかもしれません。


井戸。

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神の井戸、と書いて「しんど」と読むそうです。

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ひまわりとビールケース。

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この島では、山の斜面を覆うようにして民家が立てられているのが特徴です。
多くの作品はその中に点在しており、迷路のように入り組んだ路地を歩きながらそれらを探すことになります。

その1か所目は西堀隆史の「時の廊下」。

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この場所は、前回は同じアーティストにより「うちわ」の骨組みを使ったインタレーションが展示されていましたが、今回は「和傘」のそれが用いられた作品が発表されていました。

今回はモータによる仕掛けも新たに登場。
骨ばかりがくるくると回転している様子を見た瞬間、なぜだか分かりませんが笑いが出てしまいました。

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路地を先に進みます。
民家の壁の一部をペイントしてあるのは真壁隆二の作品「男木島 路地壁画プロジェクト wallalley」。

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急な坂の上にあるのは、アートな乳母車(オンバ)をうみだす工房「オンバ・ファクトリー」です。

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柵のうえにちょこんと置かれている作品もありました。
これはアーサー・ファンの「光の家」。

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上り坂は続きます。

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その先にあった石塚沙矢香の「うつしみず」はとても美しい作品でした。
島の過程から集めた今昔の生活用品を、上辺が水平になるように吊り下げたもの。まるでそれはピンホールカメラに映った島影のようでした。

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建物を含めた全体の眺めも、細部のディティールも、そして外光や照明のバランスもよく考えられていて、とても洗練された雰囲気があるのに、場の記憶への敬意をを失っていない。今回の芸術祭のなかでも特に印象に残った作品のひとつです。

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前庭には、農機具の一部がまるで海を眺めるかのように置かれていました。
どこかユーモラスな感じがあり、ハンス・アルプの作品を思い出しました。

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そのすぐ下の建物では川島猛とドリームフレンズによる「タイム・チューブ -とき まき つつ の家」が展示されていました。これは新聞や雑誌を巻いたものを用いたインスタレーション。筒状の物体が乱立・浮遊する様子は、まるで未来都市のようでした。

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大きな平面作品もありました。

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谷口智子の「オルガン」はパイプを路地にめぐらせた作品。その一部は望遠鏡であったり、音が出るものであったりします。既存のカーブミラーと一緒のところを見ていると、宮沢賢治風の物語が浮かんできそう。

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高橋治希の「SEA VINE」は2010年の訪問時にすでにあった作品ですが、当時は長蛇の列ができていたため見るのを断念したもの。今回は逆に、ほぼ貸切状態で見ることができました。植物のつるがうねるように室内に巡らされたインスタレーションです。

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素材は磁器。それぞれに風景などが描かれています。

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そこから少し上ったとことにある蔵に展示されていたのは、栗真由美の「記憶のボトル」。

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ボトルの中には作家が島で見つけたモノや思い出が入れられています。

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海がよく見える場所にさしかかると、先ほどの「オルガン」の一部が突然現れました。こちらは望遠鏡にあたる部分。「踊る埴輪」を思わせるフォルムです。

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漆の家プロジェクト」は、全体が漆で塗られた部屋が公開されていました。
ここには漆芸家たちの作業スペースもあります。


前回作品が展示されていた豊玉姫神社は、今回は展示無し。
ぐるっと前を通り過ぎます。

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集落から少しだけ離れたところにある角文平「AIR DIVER」は瀬戸内の島をモチーフにしたオブジェを制作し、それを室内の高い部分に配置した作品。

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それぞれの島は床に置かれた家具や雑貨と繋がっていて、まるで住空間自体が海面下にあるような設定になっています。そして、窓の外に目を向ければ実際の島影が見えますので、鑑賞者はいずれその下にある世界に意識が向かうことになります。身近に存在するのに不可視である-そんな領域までも素材とした面白い作品です。


ひととおり作品をみたところで、今度こそ昭和40年会の作品を見に行くことにしました。


海の近くまで降りていくと、そこには猫がたくさんいました。

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ものかげで毛づくろいする猫。振り返ったら、竹内栖鳳の「斑猫」のような緑の瞳をしているのかもしれない。

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蘇鉄と子猫。

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青い実が成る植物に、黄色い模様の毛虫がくっついているのを見つけました。
毛虫自体は好きじゃないけど、色の組み合わせがなんとも美しくて、つい写真を撮ってしまいました。

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そしていよいよ「男木学校」に潜入!

(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭の旅。
2泊3日の最終日です。


この日は朝6時頃に行動を開始。島行きの船に乗る前に、丹下健三のモダニズム建築として名高い「香川県庁舎」、そして讃岐うどんのお店「さか枝」に行くことにしました。

ホテルから徒歩で向かっていると、その途中で個性的な外観の文房具店を見つけました。

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大きな「目玉クリップ」がビルのうえに付いています。赤いゼムクリップの看板で知られる銀座の文房具屋さん「伊東屋」の、高松版といったところでしょうか。「ナルホド」という表記の存在感も独特。

こちらは屋号が描かれた看板。「成豊堂」とありますが、これでナルホドと読むのでしょうか?

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さらに進むと、1958年竣工の香川県庁舎が現れました。

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異なる角度からも見てみます。

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ピロティ部分。

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「神奈川県立近代美術館 鎌倉」を連想させる階段部分。

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早朝のため内部に入ることはできませんでしたが、ガラス越しに見るだけでもいろいろ魅力的なものが設置されている様子が分かりました。

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シャルロット・ペリアンを思わせる棚がありましたが、デザインは丹下によるものだそうです。

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猪熊源一郎の壁画。

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庭より。

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まさしくそこは、そのままミュージアムといってもよいような空間だと思いました。
現役の状態で使用している香川県を素直に尊敬します。


そこからすぐの場所にある「さか枝」さんでは、かけうどん、それに鶏肉と蓮根の天ぷらをいただきました。

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お店は、朝6時台だというのに満員状態。若い人の割合が多い印象。近くに香川大学があるので、近隣に下宿している学生さん達かもしれません。


(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、訪問2日目。
この日の午後は豊島をまわりました。

豊島美術館を訪問したあとは、これもまだ見たことがないクリスチャン・ボルタンスキーの「心臓音のアーカイブ」へ。徒歩で向かいました。


美術館から20分ほど坂を下りると、そこは唐櫃(からと)港の近く。
民家も比較的密集しています。

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そこで見つけた不思議なもの。
マンリョウらしき木に、洗濯用のネットがかぶせられています。実を鳥害から守るための知恵でしょうか?

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民家の軒先では猫さんたちが寛ぎ中。
この子は手足を投げ出してリラックス。

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消火栓とホース格納庫。まるで昭和映画のセットの一部のようです。

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市内局番が1ケタの看板。

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こちらは作品。イオベット&ポンズの「勝者はいない-マルチ・バスケットボール」。
たくさんのリングが付いているので、普通のものより入れやすそうですが、これで遊ぶには新たにルールを創出する必要もありそうです。

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「あいちトリエンナーレ」の飛び地!?
「唐櫃美術館」という文字が読めますが、公式ガイドブックにはこれについての言及なし。

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漁港の前を過ぎて…

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さらに道なりに森の中の道を進むと、渚に面した場所に出ました。
「心臓音のアーカイブ」はそこにありました。

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この作品は、その名の通り、世界中の人々の心臓の音が聞ける「文書館」。内部は心臓音にあわせて光が点滅するインスタレーションのほか、訪問者の心臓音を採取する部屋、そしてアーカイブ化された音を聴くことができる部屋があります。

他人の心臓の音、いいかえれば命の音を聴くという行為にはなかなか生々しいもので、個人的には、そんなに何種類も聴きたいものではありません。これが例えば世界中の波打ち際の音-それを地球上のすべての場所で連動するリズムとして-であったら、どんなに気が楽なことか。

私がこれまで見てきたこの作家の作品から判断するに、ボルタンスキーという作家は、人間を、それが儚いものゆえに深く愛しているように思います。さらには、愛するゆえに記録や蒐集という行為を通じて掌中に入れたいのではないかとさえ思ってしまいます。


来た道を戻ります。

その途中で出会った猫たち。

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街灯のようなものがついた四角いボート。どんな用途なのでしょうか。手前に黒猫。

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唐櫃港の前にあるたこ焼屋さんは、前回訪問時にも利用。
蛸が大きくて美味しいです。

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帰りは、小豆島経由で高松まで戻ることにしました。
豊島からのフェリーが小豆島に近づくと、ごま油のかおり。どうやら港にあるごま油の有名メーカー「かどや」の工場から香ってきているようです。

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島の玄関口・土庄港には島の名物オリーブも植えられていました。

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ちなみに、ここでは貨物列車用のコンテナがトラックに乗って輸送されているのを目撃。島で鉄道コンテナを見るのはなかなか貴重な機会で、鉄道ファンとして軽く興奮してしまいました。

岸壁にはチェ・ジョンファの作品「太陽の贈り物」がありました。これもまたオリーブをイメージした作品です。

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高松までの船は高速船。
飛行機または特急列車を思わせるデザインの座席でした。背もたれにつけられた白いカバーは、先ほどの「かどや」さんがスポンサーとなっている模様です。

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夜は、前回の芸術祭で出会った女性たちと高松で食事をしました。
3年に一度めぐってくるイベントならではの嬉しい再会。また次の芸術祭でもお会いしたいと思います。

(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、訪問2日目。

午前中に犬島を訪問したあと、向かった先は豊島(てしま)。
こちらへの訪問も、前回の芸術祭に続いて2回目です。

今回の主な目的は、3年前にはまだオープンしていなかった「豊島美術館」を訪れること。
こちらはアーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛による美術館です。開館は2010年の10月。


犬島からの船が到着した家浦港からは、まずはバスで島内を移動。
バス停からは海を臨みながら美術館へと向かいました。

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やがて現れたのは、なだらかなフォルムをもった建物。

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チケットを購入し、森の中の小径をとおって建物へ。

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入り口では靴を脱ぎ、そのあとトンネル状の通路を通ることになります。
これは茶道の世界でいう「にじり口」を通るときの感覚に近い。

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内部は、床と屋根に挟まれた真っ白な空間となっていました。床の質感はややしっとりとした感じ。そこからまるで葉っぱが呼吸をしているかのように、極小の水滴があちこちから湧き出でており、やがてそれは意志を持ったかのようにコロコロと動き出していました。

空間の中には少し大きめの水たまりがいくつかあって、水たちの多くは、いずれそこに行く模様。


一方、動く水とは対照的に、そこにいる人々の多くは寝そべっていたり、座りこんでいて、大きく動くことありません。


実際には、ここでの会話や動作には制限があって、ある基準を越えるとスタッフの方からすぐ声がかかるようになっているようでした。しかし、半ば強制的にではあるにしても、ランダムにやってくる不特定多数の人々と、このきわめて繊細な空間を一体化させるというのは、本当にすごいことだと思いました。


その時に私がとったメモに残されていたのは「心、凪」という言葉。
心が凪ぐことによって、その凪の下にある、より深い部分に意識が向かうような、そんな経験となりました。



(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、2日目にまず訪問したのは犬島です。

この犬島では「家プロジェクト」という取組みが行われており、「○邸」と名付けられた計5つの作品が点在しています。こちらも「精錬所」と同じく福武財団による運営。

F,I,S,A,C邸のうち最初の3つは前回からありましたが、あとの2つは今回新たに設けられたものです。


F邸の内部は名和晃平の作品「Biota (Fauna/Flora)」が展示されていました。モコモコブリブリとしたダイナミックな立体作品ですが、どう見ても会田誠の絵画作品・スペース・ウンコを連想してしまう…。

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その作品の近くには、淺井裕介の「石職人の家跡/太古の声を聴くように、昨日の声を聴く」がありました。これは石職人の家の跡地に、島内で採集した石などを使って地面に絵を描くというもの。

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この方の作品は他でも何回か見たことがありますが、アボリジニとか、エスニックな雰囲気が強くて、サイトスペシフィックな作品であればあるほど、ちょっと浮いた印象を抱いてしまう。土地の記憶や地域性のある美意識と、もうすこししっくりできればいいと思うのだけど、個人的には。


途中、こんな看板がありました。

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ここは岡山市なんですね。ところで、何を捨てたら何をされてしまうのだろう?


花壇に鏡餅。鳥よけでしょうか。

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S邸は家というよりも壁状のショーウィンドーのような作品。

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今回は荒神明香による「コンタクトレンズ」が展示されていました。

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なるほど、たしかにコンタクトレンズのような造形。
そのひとつひとつに風景が映りこんでいます。

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風景と鑑賞者をコンタクトさせるという意味もあるのかもしれません。

可愛らしいデザインの椅子も設置されていました。
金沢21世紀美術館でも見覚えのあるものです。

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すぐそばではダリアが咲いていました。

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一方、今回初めて設置されたA邸には、同じく荒神明香による「リフレクトゥ」が展示されていました。こちらはドーナツ状の構造で、その内側の空間から鑑賞することも出来ます。

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地面に落とされた影も美しい。

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カマキリも鑑賞中。

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さらに先へ進みます。

ホース格納庫とポスト。赤いボックスどうしで仲良く並んでいます

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休憩所として設置された妹島和世の「中の谷東屋」。
賑わっていました。

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C邸もまた今回初のお目見え。

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こちらではジュン・グエン・ハツシバの映像作品「The Master and the Slave: Inujima Monogatari」が上映されていました。

これは、かつてこの島の主要産業のひとつであった、石の産出に着目した作品。映像の中ではその石切り場を野球場に見立てられています。基本的な内容は、作業着を来たふたりの男性が石をボールのようにしてピッチングとバッティングをするというもので、単調かつ見方によってはかなり下らないもの。金属バットがベコベコになるわ、危険だわで見ていてあまり気持ちの良いものではないのですが、そのやりとりに眼が慣れてくると(というか飽きてくると)、地形や石の質感、そして時折映る水辺の色などに意識が向き始め、いつしか風景画を楽しむように作品を楽しめるようになっていました。

建物の外には撮影で使われたとみられる金属バットが設置されていました。
でも、野球をやっているひとから見たら、いくら作品制作のためとはいえ道具がこんな状態になっているのはちょっと悲しいだろうなあ。

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そして「家プロジェクト」最後の作品はI邸。前田征紀の「Universal Reception」のための空間となっていました。


作品そのものは光や音を使ったもので、視覚的にはかなりあっさりしたものでした。

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ここは前庭にある花畑がとてもガーリーな雰囲気。しかもこの日は芙蓉の木の下で黒猫が寛いでいました。

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このあたりまで来れば、作品の設置エリアをほぼ一周したかたちになります。
港の近くまで向かい、そこで昼食をとることにしました。

そこで利用したのは「在本商店」。

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こちらは商店という名前ですが、お店の中に入ると奥にお座敷があり、そこで食事をすることができます。

この日オーダーしたのは「犬島丼」。
これは具入りのごはんに舌平目のミンチが載っているものでした。ミンチは骨まで砕いてある感じで、なかなかの存在感。美味しかったです。

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13時過ぎ。
この日2つ目の訪問地・豊島へ出発です。


(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、訪問2日目。

犬島を訪れるのは前回の芸術祭(2010)以来、2回目です。

港のそばには「犬島チケットセンター」があり、観光の拠点となっています。

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今回はこの建物の中にある「シーサイド犬島ギャラリー」でフィオナ・タンの映像作品「Cloud Island I Project for the Venice Architecture Biennale」が上映されていました。

島内で撮影された映像から成る作品。いわゆるドキュメンタリー映像風のものですが、映像なのに質感がちゃんとあって、見る者の五感を刺激するところはさすがフィオナ・タン。そして、時間の流れ方のテンポまでも映像に汲み取っているかのようでした。


続いて、そこから徒歩ですぐのところにある「犬島精錬所美術館」へ。ここは元は銅の精錬所の遺構を使ったアートスポットです。運営は福武財団。
(前回訪問した際は単に「精錬所」という名称でしたが、2013年に名称が変わったとのこと)

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崩れかけた壁などもあり、パッと見、廃墟っぽくはありますが、よく見るとキレイ過ぎるほどに整備されています。

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ここには建築家・三分一博志とアーティスト・柳幸典のコラボによる作品があります。
建物の外側からは、内部に光を取り込むための窓を見ることができました。ここから入った光は、鏡を使った仕掛けによって、まるでリレーのように館内をめぐることになります。

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内部はスタッフの方の引率に従って順路を進まなければなりません。
3年前に見た時はちょっと冒険のような感じでインパクトも強かったのですが、2回目となると、「ふーん」という感じがしなくもないというのが正直な感想でした。

建物を出たあと、再び野外を歩きます。

やはり、島という非日常的な場所に来てしまったら完全に整備された空間というのはちょっとつまらない。ある程度放置された人工物、そしてそこに干渉していく自然物の組み合わせのほうがよほどグッときます…都市に住む人間の勝手な好みだとは思うのですが。

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散策路の奥の方には、かなり大きな建物の遺構がありました。あちこちに残る煙突とあわせ、そこからはかつてこの島が近代史に存在した一つの「光芒」であったことがはっきりと感じられました。

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どれだけ多くの人が働いていたのでしょうか。港が賑わっていたのでしょうか。

島の運命というのは、陸以上にあっという間に変わっていくものなのかもしれません。


(つづく)









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10月10日。
瀬戸内国際芸術祭への旅、2泊3日の2日目です。

この日は犬島と豊島を訪問しました。


まずは朝食。
高松駅のそばにある讃岐うどんのお店「味庄」を訪れました。本場らしいセルフのお店。
開店時間は朝の5時で、行動を早くスタートした旅人にもありがたいお店です。

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看板猫さんでしょうか。優雅な雰囲気です。

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窓に面したカウンター席は明るく、高松駅を発着する列車の様子もよく見えます。「サンライズ瀬戸」の到着も目撃。

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おなかもいっぱいになったところで、早速行動を開始。
高松駅前を横切り、そのまま港にある総合インフォメーションセンターへ向かいます。

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センターでは、高松港と会場の島などをむすぶ航路に使用できる「芸術祭6島周遊乗乗船券」を購入。2日間乗り放題で4000円。青春18きっぷを手に入れたようなワクワク感が盛り上がってきました。

こちらにはアジアンなムードの自転車が置かれていました。
芸術祭のプログラムに関連するものでしょうか?

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乗船券を手にして意気揚々と桟橋へ。
前回の芸術祭から設置されている大巻伸嗣の「Liminal Air –core-」が朝日に輝いていました。

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この日前半の目的地は犬島です。
ただし高松からこの島までは直通の船がないので、一旦直島に向かわなければなりません。

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直島ゆきのフェリー乗り場には、すでに乗船を待つ人々による長蛇の列がありました。

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船に乗り込み、デッキから周囲を見回していると、パンダが大きくあしらわれているフェリーを発見。とても目立っています。どこにいく船なのでしょうか。

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出航は8:12。とりあえず操舵室にかぶりつき。

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それから外に出て、ディティールも観察。
こちらによると、大三島で作られた船とのこと。

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大三島はこの前年に、「伊東豊雄建築ミュージアム」に行くために訪れたことがあります。
瀬戸内には本当にたくさんの島がありますが、その中で自分が訪れたことがある島の名前を目にすると、ちょっとだけ嬉しい気分になりますね。
その時の記事はこちら


旅客船以外の船の様子も間近で見ることができます。

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高松を出て50分ほどで直島の宮浦港に到着。
桟橋の先に据えられた草間彌生の赤いカボチャは、この島がアートの島であることをステートメントしているかのようです。

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接岸後の行動はスピーディーに行わなければなりません。
というのは、ここでの犬島ゆきの高速船への乗り継ぎ時間が非常にタイトであるため。しかも定員が限られているからです。この航路は1日3往復しかないので、乗られなかったら大変!
(前回の芸術祭では、乗り継ぎの際に船に乗れず、中継地の島に取り残されてしまうこともありました)

ドキドキのなかターミナルでなんとか整理券を入手!
そして大急ぎで犬島ゆきの桟橋まで。

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船の名前は「サンダーバード」号。

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出航すると、船は激しく飛沫を放ちながら爆走。
只見線のキハの音をさらに強烈にしたような音に興奮です!

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出航から約1時間で犬島に到着。

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さて、この日のアートめぐりがスタートです!

(つづく)










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