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青春18きっぷと急行「きたぐに」による、0泊2日の旅もいよいよ終盤。
東京まであと3時間というところで最期の寄り道をしました。
場所は静岡。

こちらでは、静岡市美術館で「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」を見ました。


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ルネサンス期やバロック期の芸術家の名前を冠した展覧会については、実際のところその作品の数は全体の数パーセントで、場合によってはタブローが出ていないということもあり、巨匠の名作を見たくてやってくる来館者をがっかりさせてしまうことがあります。この展覧会もまたレオナルド本人の作として同定されている作品は習作が数点という状況でしたが、しかし、その展覧会自体の内容はたいへん面白いもので、個人的にはかなり満足のいく内容でした。


展覧会は5つのセクションに分けられ、それぞれ「レオナルド・ダ・ヴィンチとレオナルド派」、「レオナルド時代の女性像」、「「モナ・リザ」のイメージの広がり」「「裸のモナ・リザ」、「レダと白鳥」」そして「神話化されるレオナルド」となっていました。全体を通してレオナルド・ダ・ヴィンチという「男性」と「モナ・リザ」という「女性」がふたつの軸として機能しながら展開する内容になっていて、このふたつの主役が同時代の美術に影響を与えたあとやがて「謎」が付与されながら神格化されていくプロセスを読み取ることができました。

「裸のモナ・リザ」と呼ばれる作品については、レオナルドの弟子のサライや様々な画家が描いた作品が残されており、同じ内容の作品が複数製作されていることから、おそらくレオナルド本人による作品が存在していたのでは、と推測されているものです。

同じモデルを「着衣と裸形」で表現するということに関して、思い出さざるを得ないのは、いま国立西洋美術館で公開中の、ゴヤによる「着衣のマハ」と、それと対をなす「裸のマハ」です。マハもまたモナ・リザと同様にモデルについては諸説がある作品。

モナ・リザについてはモデルが実在の人物のほか聖人である可能性も指摘されていますが、このほかレオナルド本人の自画像という説も。ではそのモナ・リザが裸形で表現された理由とは一体…。

こんなことを言っていると、展覧会場での解説をちゃんと読んでいなかったのがばればれですが…前日から20時間以上列車に乗り夜行列車ではほとんど寝ていなかったので、実際にはこの時点での理解・思考能力がいまいちとなっておりました、どうぞお許しを。


その後は街に出てイルミネーションを見ました。
富士山をイメージしたデザインはさすが静岡。


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そして夕食をとるために駅ビルのパルシェのダイニングフロアがリニューアルされたので、以前から気に入っていた「沼津魚がし鮨」に向かいましたが、あいにくこの日は予約等で満席。そこで、同フロアー内にあるイタリアン「DADA CLASSICO」に入ってみたところ、窓際の席からは列車の往来も見え、盛り付けも垢抜けていてとても気に入りました。デキャンタのワインが安くておいしかったのも嬉しかったです。

イタリアルネサンス関係の展覧会を見た後だったのでこれも何かのご縁かと。

いい気分になったまま、毎度おなじみ19:30発の普通列車で東京まで。


2日間で関東・東北・北陸・関西・東海をぐるりとめぐった、2011年最期の鉄道旅。その移動距離は1516.9㎞、乗車時間は25時間と52分でした。
by paginademaiko | 2011-12-31 18:10 | アート
日本列島のなかほどをぐるっと反時計回りにまわるこの旅、新潟からの夜行列車「きたぐに」を京都駅で降りた私は、ここから東海道線で東に向かいました。


京都駅では117系を見ました。
乗らないけれど、とりあえず写真を撮りました。

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京都から米原に行くときには、たいていは「新快速」に乗りますが、早朝のため走っておらず、「普通」で米原に向かいました。


7時半過ぎに米原に到着。

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ここで楽しみにしているのホームのうどんやさん…ですが、営業していない様子。キヨスクのおばさんにたずねると開店は朝9時とのこと。ホームのお店としてこの営業時間というのはいかがなものか…温かい食べものを渇望する気持ちも手伝って釈然としない。


しかし、そんな気持ちは、大垣行き普通列車の登場によって吹き飛ばされました。


なんと373系!

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にやにやしながら先頭車両最前列を陣取ったところに、構内放送で貨物列車通過のお知らせが入ったので、しっかりとEF210を見送りました。

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終点の大垣ではひきつづき東行きの東海道線に乗り換え、名古屋で下車。ここからは「あおなみ線」に乗り換え、今年3月に開館した「リニア・鉄道館」に向かいました。

「あおなみ線」もまた初めての乗車でした。ベンチシートの向かいに座っていた男性二人組みは鉄道ファンとみえ、停車するたびに駅名標示などを一眼で撮影していました。途中には名古屋貨物ターミナルもありました。ここは高架…というよりも盛り土のうえにあるような構造になっていました。


途中から車窓には港湾部の景色がひろがりました。

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リニア・鉄道館は終点の金城ふ頭駅からすぐ。建物の外観はいたってシンプルです。

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最初の展示スペースには、古今の高速列車の代表例として、蒸気機関車のC62と、新幹線そしてリニアの試験車両が展示されていました。


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「名」の書体に妙に反応してしまいました。
ユーゲントシュティール風。

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そしてメインの車両展示スペースへ。

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展示はほぼ時代順。明治から戦前のものはほとんどがチョコレート色。


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蒸気機関車と客車が一体化した「ホジ」。インパクトのある形式名ですが、「ホ」も「ジ」もあまり聞いたことがなく、どのような意味なのかが分かりません。壁面の標示によると3等車だから「イロハニホ」の「ホ」ではないだろうし、ホッパ車の「ホ」でもないだろうし。

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(その後、某車両センターの方より「ホ」は重さを表す階級「コホナオス」の「ホ」、「ジ」は「自動車」または「自動客車」の「ジ」とのご教示いただきました)


随分とモダンなデザインのモハ52。

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おおきな前部標識の湘南色。

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「しなの」のヘッドマークはやはり「シナノキ」がモチーフなのでしょうか。

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展示されているものにはあまり触らないほうがいいと知りつつ、つい抱きつき~!

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0系の食堂車はミッドセンチュリーなデザインの宝庫。

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前部標識が高めの位置にあるキハ82。

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そして屋外展示。とてもちっちゃな蒸気機関車。

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鉄道博物館にくらべ、リニア・鉄道館は全体的にシンプルな印象で、照明や再現展示もふくめて「演出」というものは控えめでした。たとえば鉄道博物館では会場全体がもっと暗くて車両に当てられるスポットライトの効果が分かりやすくなっていたり、乗客役のマネキンが車内に座っていたりといった要素がありましたが、こちらでは照明はよりフラットで、視覚・文字を通じた情報量は少なめ。基本的に車両はパラレルな配置となっているので、会場内での位置認識は楽でした。これはおそらく工場や車両センターなどに車両が置かれているイメージを踏襲した展示プランなのでしょう。


アミューズメントの要素が予想以上に少なかったのはやや意外でしが、そこに「ものづくり」への自負を読み取るのは推測しすぎというものでしょうか。


帰りはふたたびあおなみ線で名古屋まで。

この時には重要なミッションがありました。それは、「行き」のあおなみ線乗車時に、名古屋貨物ターミナルでチラリと目撃した「みどりのコンテナ」を写真におさめること。

その結果、画面の左寄りの奥のほうに、なんとかとらえることに成功。上3分の1くらいしか写らなかったので、個体番号の識別が出来なかったのは残念ですが…。

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名古屋からは東海道線で引き続き東へ向かい、そして静岡駅で下車。
ここで展覧会をもうひとつ。
急行という言葉には、なんともいえない郷愁感があります。
現在では急行というカテゴリを冠した列車が減ってしまったこともそのひとつかもしれません。



数ヶ月前に、新潟と大阪をむすぶ夜行列車である急行「きたぐに」が次のダイヤ改正でなくなるかもしれないという情報を聞いたわたしは、この冬にこの列車に乗ることにしました。


夜22時過ぎの新潟駅。
急行「きたぐに」が入線してきました。

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夜行列車らしく、星をまとった欧文表記のロゴ。

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新潟県をイメージしたヘッドマーク。

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すこしくたびれ気味の方向幕。

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指定をとっていた座席は、グリーン席という扱いでしたが、実際に座ってみると、ひじ掛けが上がらない構造になっていて、やや手狭感がありました。そこで私は、空席の目立っていた、ボックス形式の自由席に移動することにしました。

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シートはモスグリーン。ひじ掛け部分などに深みのある赤が配され、なんとなくヨーロッパ風の配色です。

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ボックスシートで夜を明かすというのは初めての経験でした。この車両は、席間の間隔が広く取られていて、対面する席に足を乗せようとすると、宙に浮いている部分が多くなってしまって、どうも安定しなかったり…2人がけのシートにうずくまって横になり「屈葬みたい」と思いながら寝てみたり。いろいろ姿勢を変えてもうまくいかず、結局、眠っていたのは2時間くらいでした。


翌朝、6時過ぎに「きたぐに」は京都に停車。私はここで下車しました。

先頭車両の前よりドアより下車して、停車時間のうちにいざ撮影…とおもったらホームにはすでにこの列車を待ち構えていた鉄道少年の姿が10名近く。平日の早朝だったので、学校に行く前の活動でしょうか。彼らに紛れて朝の姿をとらえてみました。


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そしてまだ明けやらぬ空の下、きたぐには大阪に向かっていきました。

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2日間で関東・東北・北陸・関西・東海地方をぐるっとまわる18きっぷの旅。
初日の午前中に水戸芸術館を訪問したあと、常磐線でいわきまで向かいました。

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ボックス席を占有し、うとうとしていると、前方から貨物列車の気配…
東邦亜鉛号とのすれ違いでした。

そしていわきから磐越東線に乗り換え。

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行き先は郡山です。

この路線に乗るのは初めて。そして、この旅で初の気動車です。
こちらの駅には、まだデビューしていない新型の「ひたち」の車両も留置されていました。


出発してしばらくすると、車内は閑散としてきました。
車窓から外を見上げれば青空。

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列車は、里や山あいを進みます。

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郡山には1時間半ほどで到しました。
たくさんのタンク車が並んでいるのをみると「郡山だなあ」と感じます。

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そして貨物列車接近の気配。向こうから突進してきた赤い機関車は…EH500でした。

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郡山で乗り換える列車まで1時間ほど時間があったので、おひるごはん。駅そばです。

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今回は旅の新アイテムとして「貨物時刻表」を持ってきたので、それをもとに郡山駅通過の貨物列車の時間を割り出し、ホームで待機。すると、またEH500がやってきました。旅の楽しみがまたひとつ増えました。

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ここから乗車するのは「あいづライナー」。会津若松行きです。
国鉄色の特急型車両ですが、快速扱いのため18きっぷでも乗ることができます。

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あいづライナー車中ではちょっと豪華なおやつの時間。水戸駅の改札口のそばにある輸入食料品店に立ち寄った際にスパークリングワインの小瓶を見つけたので、ドライフルーツとともに買い込んでおいたのです。特急型車両だからなせる技にごきげん。ちなみにこの車両、窓枠がゴールドに塗られていました。

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会津若松に着く頃にはすっかり暗くなっていました。

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ひきつづき磐越西線に乗るためにホームを移動すると、停車中の只見線を見ることができました。ガリガリガリというディーゼルの音。只見線のディーゼルの音はちょっと特別な感じがするような気がして、ドキマギしてしまいます。

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ここから乗車したのは喜多方行きのステンレス。

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始発の会津若松から15分ほどであっという間に終点に到着。喜多方には子どものときにきて以来ですが、この日の駅前はかなり静かな感じで、かつての記憶といまいちリンクせず。とりあえずラーメンをさがして雨の中歩き出します。


そして見つけたのがこのお店。ノスタルジックな表がまえと「てのし餃子」の文字に引かれて入ってみることにしました。

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ラーメン600円は安いなと思いましたが、餃子550円というのはちょっと高めかな?とおもいつつこの2品をオーダー。

昔ながらの雰囲気のあるラーメンでした。

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そして餃子は…ボッテリとした大きな餃子が5個お皿に乗ってきました。食べてみると、皮は厚めで、具はかなりニンニクが強く、そして全体的に油っぽい。確かにおいしかったのですが、これらの理由により3つくらい食べたところでくらくらし始めつつ、しかしなんとか完食。私は胃があまり強いほうではなく、特に油ものに弱いので、胃に危機感を感じながらお会計を済ませたのちにダッシュで駅に戻り、キヨスクでホットの黒烏龍茶を調達して一気飲みしました。


その後、後続列車で新津まで移動。

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ここからは115系で新潟まで向かいました。

新潟駅に着いたときに、この列車には湘南色の車両が連結されていたことを知りました。

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そしていよいよ「きたぐに」への乗車です。
今年も12月10日に冬の「青春18きっぷ」が解禁となりました。

この冬、私にはぜひ乗っておきたい列車がありました。それは急行「きたぐに」。というのは、来年の3月のダイヤ改正でどうやらふたつの夜行列車-「日本海」と「きたぐに」が廃止になるらしい、という情報を耳にしており、このうちまだ「きたぐに」には乗ったことがなかったのです。


ということで、私は「0泊2日」で、18きっぷと夜行列車「きたぐに」を組み合わせた旅に出ることにしました。



まずはみどりの窓口に行き、新潟発の「きたぐに」のきっぷを手配。クラスは寝台車のほか座席の指定席と自由席がありますが、お財布と相談のうえ座席指定席を予約しました。

そして次に考えなければならないのは、「きたぐに」乗車の前後の行程です。私が18きっぷで旅をするときに決めている条件には次のふたつがあります。

① 1日あたり1ヶ所以上はミュージアム(美術館・博物館)に行く
② 1シーズンあたり1路線は未乗車路線に乗る

「きたぐにの発車にあわせ、夜22時までに新潟に到着」という条件はかなり自由度の高いものなので、その間にいける美術館はいくつも考えられます…高崎、長野、あるいは富山…。しかし問題は②です。新潟までいくには上野から高崎、水上、長岡経由が最も便利ですが、このルートはこれまでも繰り返し利用しており、できるなら違うルートで行ってみたい。

結局、前日の夜まで悩んだ私は、下記の行程で旅をすることにしました。このうち磐越東線と磐越西線(一部区間)が見乗車となっていました。


1日目  
東京~新潟
利用する路線:常磐線・磐越東線・磐越西線・信越本線
訪問するミュージアム:水戸芸術館「清川あさみ 美/女/採/集」


夜行列車 急行「きたぐに」 


2日目
京都~東京
利用する路線:東海道線
訪問するミュージアム:リニア・鉄道館、静岡市美術館「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想」




旅の初日。

まずは常磐線の各駅停車で自宅最寄り駅を出発し、松戸まで向かいました。


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ここで快速列車に乗り換えました。


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2時間弱で水戸に到着。
ここで一旦下車し、ホームのおそば屋さんで朝ごはん。
ちくわ天そばがおすすめのようでしたので、それに素直に従う。

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水郡線のホームにはカラフルな気動車。

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水戸駅からはバスで水戸芸術館まで向かいました。
こちらでは「清川あさみ 美/女/採/集」を見ました。

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清川さんの作品は、2009年に東京都庭園美術館で開催された「Stitch by Stitchステッチ・バイ・ステッチ 針と糸で描くわたし」の作品が強く印象に残っています。

今回の展覧会は、1979年生まれのこのアーティストによる、これまでの仕事に新作を加えた内容になっていました。清川さんは、写真や布を支持体とし、それに刺繍やビーズなどを施した作品を製作されています。

結論からいうと2年前に見た「Comprex/Dream Time」シリーズ-美女のヌード写真に直接ビーズ刺繍によって皺や肥満など様々なコンプレックスが施された作品-が最も優れているという印象をうけました。

この日初めて見た、数十名の女優やモデル、AKBのメンバーを被写体とした「美女採集シリーズ」については、率直に、それほどのインパクトを受けなかったというか、若干のがっかり感がありました。その理由は、支持体となる写真に、すでにCGなどで加工が施されているものが多く、それによって「写真」そのものの鮮度が落ちている気がしたからです。


私が2年前に「Comprex/Dream Time」シリーズから衝撃を受けたのは、そこに「写真」と「針と糸」の緊迫した関係があったからです。写真という「紙」に対して、バロック的な「過剰さ」をともなう糸やビーズによる介入が施されたその作品は、美しさと暴力的を同時にスマートにまとうことに成功していると思ったものです。


しかし、この年齢でこの仕事の量と内容という点については、やはりすごい人なのだなと思いました。


メインの企画展を見た後に導かれるスペースでは、「クオリテム」シリーズの82回目として企画された上村洋一さんのインタレーションを見ました。その作品は、エリック・サティの作品をチャンス・オペレーションシステムによって再構成し、それを楽譜と音というメディアによって表現するというものでした。その楽譜は紙ではなくもっと硬質なパネルになっていて、黒地に白や黄色、緑、赤、青、紫といった色で五線譜が抜かれおり、その数枚を1ユニットとしたモビール仕立てになっていました。

その解説では、不協和音とモビールの揺らぎについて、不安な気持ちを想起させるものと指摘し、そして震災が作家にあたえた影響について言及したあと、しかしながらモビールという構造自体が巨大な衝動を回避することができる「しなやかで強い構造」であることから、この作品がペシミスティック一色でものではないということが述べられていました。


その中では楽譜に用いられている色については特に言及されていませんでしたが、私がなんとなく想起してしまったのは、仏教で用いられる五色の幡や幕。仏教でいう「五色」とはこれは如来の身体に関わる色(髪は青で、身体が黄色など)をあつめたもので、それぞれの色が、如来がそなえる強さや安定性といった要素を象徴しています。この作品に仏教思想が反映されている証拠は基本的にはないと思うのですが、五色のことを思いながら見てみると、様々な意味の広がりが自分のなかに現れてくるのも確かなことでした。そして、そういうことも有、というのが現代美術なのだろう、と自己正当化をしてみたり。音楽に詳しい人が見たらもちろん違う意見が出てくるのでしょうね。


水戸芸術館では、震災で被災したパイプオルガンの修復作業が行なわれていました。



…旅の初日の午前中ですでに語りすぎてしまった感じもしますが、18きっぷの旅はここからが本格的にスタートです。



水戸駅までバスに戻り、常磐線でいわきに向かいました。
by paginademaiko | 2011-12-31 17:08 | アート
12月12日。
梶ヶ谷貨物ターミナルで写真を撮ったあとは、恵比寿へ向かいました。


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目的は、東京都写真美術館の内覧会。
この日の前後にオープンする3つの展覧会がその対象となっていました。

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会場に入ったところで、写真家のI氏と遭遇。一緒に展覧会を回りました。

最初に見たのは3階展示室の「ストリート・ライフ ヨーロッパを見つめた7人の写真家たち」。
カメラが記録手段、やがて芸術表現のためのツールとして社会に浸透していく19世紀のヨーロッパにおいて、急速に変化を遂げる都市の姿や、そこに暮らす人々の姿をとらえた写真家たちの展覧会。画面のなかには社会的に要求された「記録」と写真家の興味に由来する「表現」が混在していて、写真家によってその比率は様々。「記録」を優先度が高い写真には修正が多く加えられたものもあり、一瞬「版画?」と思えるようなものも。

次にたずねたのは「日本の新進作家展vol.10 写真の飛躍 そこに原点がある。」。日本の若手作家5名によるグループ展です。会場は2階展示室。


最初のスペースに展示されていた添野和幸さんはフォトグラムで「泡」を撮影したシリーズを出品。私は、フォトグラムという手法と、シャワシャワとして表現に、瑛九のフォトグラムや晩年の油彩作品を思い出しました。ちなみに、この泡はビールなどのお酒によるものだそう。

何百枚、何千枚といったコンタクトプリントサイズの写真をコラージュすることにより世界各地の都市をパノラミックに表現した西野壮平さんの作品は、矩形のなかにうねるようにランドマークや幹線、線路が展開し、様々なエネルギーにあふれた都市のカオス感が表現されていました。なかなか面白いものだとは思いましたが、わがままな鑑賞者の意見としては、人口分布に「粗密」のある地域や島嶼部をテーマにしたり、写真のサイズにバリエーションをつけてみても面白いんじゃないかな、と勝手に想像したり。


続いて、ピンポールカメラを使った佐野陽一さんの作品、塩銀プリントによる北野謙さんの作品を見て、最後のスペースで出会ったのは春木麻衣子さんの作品。茫漠とした風景のなかに、身体性の希薄な人間が点景のように存在する写真は、いかにも女性の作品という感じがしました。被写体となっている人物の状態がニュートラルなため、見るものの心理によってさまざまなストーリーが生み出されるような作品だと思いました。


この日最後に訪問したのは地下1階展示室の「映像をめぐる冒険vol.4 見えない世界の見つめ方」。テーマの英文表記はBEYOD THE NAKED EYEとなっています。


この展覧会のコンテンツは大きくわけてふたつ。ひとつは、原始的な光学機器、ガリレオの地動説にまつわる資料、そしてNASAの研究資料といった科学史に登場するよるな資料、もうひとつは、現代のアーティストによるインスタレーションです。資料や作品そのものはインパクトものがあって面白かったのですが、どうしても科学系博物館の展示を見ていたところに文化庁メディア芸術祭のような雰囲気の空間が突然登場したような印象が残りました。展示のうえで、この両者をもう少し有機的につなぎ合わせるような工夫があったほうが見る側としてはありがたかったかな。


いろいろ好き勝手に感想を申し上げましたが、写真をなりわいとする方と写真の展覧会を見るのはなかなか刺激的で楽しい時間であり、あっという間に内覧会の終了時刻となってしまいました。その後は図々しくI氏にくっついて関係者向けの2次会に参加、何名かの出品作家さんともお話できて、みのりある機会となりました。
by paginademaiko | 2011-12-31 16:39 | アート
夏に続いて、川崎在住の知り合いのS氏が「赤い青春18きっぷ」を手配してくれたので、その受け渡しのついでに川崎にある梶ヶ谷貨物ターミナルまで連れて行っていただきました。


手土産のために方向幕を持って、一眼と貨物の時刻表を持って歩いている私は、職務質問をされたら明らかに鉄ちゃんと認定される状態。


この日の集合場所は東急の高津駅。初めての下車でした。
ホームの近未来的なデザインが面白くて、何枚か写真を撮影。


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ランチのち、梶ヶ谷貨物ターミナルへ。

このターミナルは、隣接するホームセンターの屋上から一望することができます。この秋入手した貨物列車の時刻表で発着時刻を調べながら張り込みをしていると、運よく発着の頻繁な時間帯であったため次々に列車がやってきました。。


そのうちひとつが、入れ換え作業のために、私が立っているところの近くまでやってきました。
そしてその上には「緑コンテナ」が…興奮して鼻血が出そうに!
(2009年にコンテナ輸送50周年を記念して作られたこのコンテナ、全国に50個しかないのです)

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わーわー騒いで一眼を構えていたら、運転士さんに見られてしまいました。



タキ1000を牽引するブルーサンダーさん。

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EF210が右手からやってきた…と思ったら左手からEF66! 
キャァァァ!(騒々しくてすみません)

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この日は逆光のため撮影には向いていないコンディションでしたが…日没時間がもっと遅い夏期にでもまた撮影にチャレンジしてみたいと思います。
12月4日。天気のよいこの日は、東京と横浜で3つの美術館を訪れました。


品川駅から徒歩で向かったのは原美術館。


駅からの道の途中にあるギャラリー(中に入ることはできず、ウィンドウの外側から見るようになっています)では冨長敦也さんの作品を見ました。


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原美術館では「アートスコープ2009-2011 インヴィジブル・メモリーズ」を見ました。

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これは、ダイムラー・ファウンデーション ジャパンの文化・芸術支援活動「アート・スコープ」により留学した日本人とドイツ人の作家、小泉明郎、佐伯洋江、エヴァ・ベレンデス、ヤン・シャレルマンの4名によるグループ展です。


原美術館でも最もお気に入りの、庭に面し、半円形のプランを持つスペースに展示されていたのは、このうちエヴァ・ベレンデスの作品。パンチ穴によりメッシュ上に加工された不定形の金属版を「ちょうつがい」でつなぎ合わせ、自立させているこの作品は、まるで二曲一隻の屏風のよう。2枚の金属板はそれぞれ紫色と白で、その色彩は窓の外の紅葉のオレンジ色と鮮やかに響きあっていました。一方で、この作品が外光を受けることによって生み出される影は、モホイ=ナジのライト・スペース・モデュレーターが生み出すシルエットのように幾何学的で、ドラマチックでした。



続いて、この日2ヵ所目に訪れた美術館は横浜のそごう美術館。こちらでは「柳宗悦展 暮らしへの眼差し」を見ました。


民藝関係の展覧会は、これまでに何度か見たことがありますが、その中でも今年5月に大阪市立東洋陶磁美術館で見た、「浅川伯教・巧兄弟の心と眼-朝鮮時代の美」はとても印象深いものでした。柳は朝鮮陶磁の研究者である浅川兄弟との出会いによって、陶磁器をはじめとする朝鮮半島の工芸品に興味を持つようになるのですが、この展覧会ではそのきっかけとなった小さな壷も出品されていました。民藝運動は、多くのすぐれた作家や理論家たちによって推し進められましたが、それぞれの人物を主役とした展覧会を見る経験を重ねていくたびに、その運動のエネルギーの大きさ、豊かさを実感することができます。


そしてその後は信濃町まで移動し、佐藤美術館の「神戸智行展」を訪問しました。神戸さんの作品は、全体的に淡い色彩で動植物が清楚に描かれていますが、今回の展覧会では、はっきりとした黒でこづえを表現した作品が新たに登場し、そこには凛とした強さのようなものが感じられ、純粋に、いいなと思いました。


ここ数年の神戸さんの展覧会で散見される、インスタレーションのようなスタイルをもった立体作品も展示されていましたが、個人的にまだ関心が持てない、というか必然性を感じることができない。神戸さんの作品を最初に見たときに、日常のなかで傍に置いてみたい作品だと感じたことも、大きく作用しているのかもしれません。
by paginademaiko | 2011-12-26 08:33 | アート
12月3日。夕暮れ時の恵比寿を訪れました。

ガーデンプレイスはクリスマスのイルミネーション。スロープにはレッドカーペットが。

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シクラメンの植え込みの中にも照明が仕込まれていました。花は光りをはらんですこし透明にも見え、陰影の様子がジョルジュ・ラ・トゥールの絵画を思わせます。

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毎年恒例の、バカラのシャンデリア。


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東京都写真美術館では「畠山直哉展 ナチュラル・ストーリーズ」を見ました。

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続いて、MA2Galleryで「岡崎 / 大西/ オブジェ[2]」、ナディッフアパートで「都築響一「暗夜小路 上野~浅草アンダーグラウンド・クルーズ」を訪問。

「かたぬき」というロダンの時代であればタブーであった技法で作られる前者のクールなダダ感から、ふんどしバーからラブドールまでを被写体とした後者のあくどい感じの差がすごいなと思いつつ、見る順番が逆ならまた印象が残れるのかなと推察したり。


恵比寿は現代美術好きには嬉しい場所がたくさんあって、私にとっては定期的には歩かなければならない街になっています。
by paginademaiko | 2011-12-18 21:12 | アート
クレマチスの丘にあるふたつの美術館で展覧会を見たあとは、シャトルバスで三島駅に戻り、駅のすぐそばにある文学館「大岡信ことば館」へ。


こちらでは「大岡信の万葉集展 人麻呂の宇宙」を見ました。これは人麻呂を中心にした万葉文学の研究をテーマにした企画です。

古い歌集のなかでは私は古今和歌集が好きで岩波文庫版を愛読書としていますが、こちらで触れた万葉集のうたでは、それにくらべて自然に対する感情移入が控えめで、「人間は人間、自然は自然」といったように「自然からの、人間の自立」を感じさせるように思えました。全体的に大らかで素朴な雰囲気があって、高校生の頃に古典の授業でならった「ますらをぶり」ってこういうことなのかな、と…。


こちらには、大岡信の作品にゆかりのある現代美術家による作品も展示されています。クレマチスの丘にあるミュージアムを訪問するアートファンの方には必見だと思います。


この日の終盤は、ちょっとだけ鉄活動。まずは伊豆箱根鉄道を2駅ほど利用して、三嶋大社へ。


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夕闇に包まれはじめた社殿は、内側に明りがともり、たいへん神秘的な雰囲気でした。

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そして帰りは沼津から、車両が引退間近という特急「あさぎり」で新宿まで。

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運転士さんのすぐ後ろの席から、夜の御殿場線と小田急線を楽しみました。
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