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瀬戸内国際芸術祭、訪問2日目。

午前中に犬島を訪問したあと、向かった先は豊島(てしま)。
こちらへの訪問も、前回の芸術祭に続いて2回目です。

今回の主な目的は、3年前にはまだオープンしていなかった「豊島美術館」を訪れること。
こちらはアーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛による美術館です。開館は2010年の10月。


犬島からの船が到着した家浦港からは、まずはバスで島内を移動。
バス停からは海を臨みながら美術館へと向かいました。

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やがて現れたのは、なだらかなフォルムをもった建物。

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チケットを購入し、森の中の小径をとおって建物へ。

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入り口では靴を脱ぎ、そのあとトンネル状の通路を通ることになります。
これは茶道の世界でいう「にじり口」を通るときの感覚に近い。

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内部は、床と屋根に挟まれた真っ白な空間となっていました。床の質感はややしっとりとした感じ。そこからまるで葉っぱが呼吸をしているかのように、極小の水滴があちこちから湧き出でており、やがてそれは意志を持ったかのようにコロコロと動き出していました。

空間の中には少し大きめの水たまりがいくつかあって、水たちの多くは、いずれそこに行く模様。


一方、動く水とは対照的に、そこにいる人々の多くは寝そべっていたり、座りこんでいて、大きく動くことありません。


実際には、ここでの会話や動作には制限があって、ある基準を越えるとスタッフの方からすぐ声がかかるようになっているようでした。しかし、半ば強制的にではあるにしても、ランダムにやってくる不特定多数の人々と、このきわめて繊細な空間を一体化させるというのは、本当にすごいことだと思いました。


その時に私がとったメモに残されていたのは「心、凪」という言葉。
心が凪ぐことによって、その凪の下にある、より深い部分に意識が向かうような、そんな経験となりました。



(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、2日目にまず訪問したのは犬島です。

この犬島では「家プロジェクト」という取組みが行われており、「○邸」と名付けられた計5つの作品が点在しています。こちらも「精錬所」と同じく福武財団による運営。

F,I,S,A,C邸のうち最初の3つは前回からありましたが、あとの2つは今回新たに設けられたものです。


F邸の内部は名和晃平の作品「Biota (Fauna/Flora)」が展示されていました。モコモコブリブリとしたダイナミックな立体作品ですが、どう見ても会田誠の絵画作品・スペース・ウンコを連想してしまう…。

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その作品の近くには、淺井裕介の「石職人の家跡/太古の声を聴くように、昨日の声を聴く」がありました。これは石職人の家の跡地に、島内で採集した石などを使って地面に絵を描くというもの。

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この方の作品は他でも何回か見たことがありますが、アボリジニとか、エスニックな雰囲気が強くて、サイトスペシフィックな作品であればあるほど、ちょっと浮いた印象を抱いてしまう。土地の記憶や地域性のある美意識と、もうすこししっくりできればいいと思うのだけど、個人的には。


途中、こんな看板がありました。

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ここは岡山市なんですね。ところで、何を捨てたら何をされてしまうのだろう?


花壇に鏡餅。鳥よけでしょうか。

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S邸は家というよりも壁状のショーウィンドーのような作品。

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今回は荒神明香による「コンタクトレンズ」が展示されていました。

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なるほど、たしかにコンタクトレンズのような造形。
そのひとつひとつに風景が映りこんでいます。

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風景と鑑賞者をコンタクトさせるという意味もあるのかもしれません。

可愛らしいデザインの椅子も設置されていました。
金沢21世紀美術館でも見覚えのあるものです。

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すぐそばではダリアが咲いていました。

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一方、今回初めて設置されたA邸には、同じく荒神明香による「リフレクトゥ」が展示されていました。こちらはドーナツ状の構造で、その内側の空間から鑑賞することも出来ます。

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地面に落とされた影も美しい。

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カマキリも鑑賞中。

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さらに先へ進みます。

ホース格納庫とポスト。赤いボックスどうしで仲良く並んでいます

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休憩所として設置された妹島和世の「中の谷東屋」。
賑わっていました。

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C邸もまた今回初のお目見え。

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こちらではジュン・グエン・ハツシバの映像作品「The Master and the Slave: Inujima Monogatari」が上映されていました。

これは、かつてこの島の主要産業のひとつであった、石の産出に着目した作品。映像の中ではその石切り場を野球場に見立てられています。基本的な内容は、作業着を来たふたりの男性が石をボールのようにしてピッチングとバッティングをするというもので、単調かつ見方によってはかなり下らないもの。金属バットがベコベコになるわ、危険だわで見ていてあまり気持ちの良いものではないのですが、そのやりとりに眼が慣れてくると(というか飽きてくると)、地形や石の質感、そして時折映る水辺の色などに意識が向き始め、いつしか風景画を楽しむように作品を楽しめるようになっていました。

建物の外には撮影で使われたとみられる金属バットが設置されていました。
でも、野球をやっているひとから見たら、いくら作品制作のためとはいえ道具がこんな状態になっているのはちょっと悲しいだろうなあ。

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そして「家プロジェクト」最後の作品はI邸。前田征紀の「Universal Reception」のための空間となっていました。


作品そのものは光や音を使ったもので、視覚的にはかなりあっさりしたものでした。

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ここは前庭にある花畑がとてもガーリーな雰囲気。しかもこの日は芙蓉の木の下で黒猫が寛いでいました。

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このあたりまで来れば、作品の設置エリアをほぼ一周したかたちになります。
港の近くまで向かい、そこで昼食をとることにしました。

そこで利用したのは「在本商店」。

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こちらは商店という名前ですが、お店の中に入ると奥にお座敷があり、そこで食事をすることができます。

この日オーダーしたのは「犬島丼」。
これは具入りのごはんに舌平目のミンチが載っているものでした。ミンチは骨まで砕いてある感じで、なかなかの存在感。美味しかったです。

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13時過ぎ。
この日2つ目の訪問地・豊島へ出発です。


(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、訪問2日目。

犬島を訪れるのは前回の芸術祭(2010)以来、2回目です。

港のそばには「犬島チケットセンター」があり、観光の拠点となっています。

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今回はこの建物の中にある「シーサイド犬島ギャラリー」でフィオナ・タンの映像作品「Cloud Island I Project for the Venice Architecture Biennale」が上映されていました。

島内で撮影された映像から成る作品。いわゆるドキュメンタリー映像風のものですが、映像なのに質感がちゃんとあって、見る者の五感を刺激するところはさすがフィオナ・タン。そして、時間の流れ方のテンポまでも映像に汲み取っているかのようでした。


続いて、そこから徒歩ですぐのところにある「犬島精錬所美術館」へ。ここは元は銅の精錬所の遺構を使ったアートスポットです。運営は福武財団。
(前回訪問した際は単に「精錬所」という名称でしたが、2013年に名称が変わったとのこと)

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崩れかけた壁などもあり、パッと見、廃墟っぽくはありますが、よく見るとキレイ過ぎるほどに整備されています。

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ここには建築家・三分一博志とアーティスト・柳幸典のコラボによる作品があります。
建物の外側からは、内部に光を取り込むための窓を見ることができました。ここから入った光は、鏡を使った仕掛けによって、まるでリレーのように館内をめぐることになります。

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内部はスタッフの方の引率に従って順路を進まなければなりません。
3年前に見た時はちょっと冒険のような感じでインパクトも強かったのですが、2回目となると、「ふーん」という感じがしなくもないというのが正直な感想でした。

建物を出たあと、再び野外を歩きます。

やはり、島という非日常的な場所に来てしまったら完全に整備された空間というのはちょっとつまらない。ある程度放置された人工物、そしてそこに干渉していく自然物の組み合わせのほうがよほどグッときます…都市に住む人間の勝手な好みだとは思うのですが。

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散策路の奥の方には、かなり大きな建物の遺構がありました。あちこちに残る煙突とあわせ、そこからはかつてこの島が近代史に存在した一つの「光芒」であったことがはっきりと感じられました。

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どれだけ多くの人が働いていたのでしょうか。港が賑わっていたのでしょうか。

島の運命というのは、陸以上にあっという間に変わっていくものなのかもしれません。


(つづく)









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10月10日。
瀬戸内国際芸術祭への旅、2泊3日の2日目です。

この日は犬島と豊島を訪問しました。


まずは朝食。
高松駅のそばにある讃岐うどんのお店「味庄」を訪れました。本場らしいセルフのお店。
開店時間は朝の5時で、行動を早くスタートした旅人にもありがたいお店です。

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看板猫さんでしょうか。優雅な雰囲気です。

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窓に面したカウンター席は明るく、高松駅を発着する列車の様子もよく見えます。「サンライズ瀬戸」の到着も目撃。

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おなかもいっぱいになったところで、早速行動を開始。
高松駅前を横切り、そのまま港にある総合インフォメーションセンターへ向かいます。

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センターでは、高松港と会場の島などをむすぶ航路に使用できる「芸術祭6島周遊乗乗船券」を購入。2日間乗り放題で4000円。青春18きっぷを手に入れたようなワクワク感が盛り上がってきました。

こちらにはアジアンなムードの自転車が置かれていました。
芸術祭のプログラムに関連するものでしょうか?

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乗船券を手にして意気揚々と桟橋へ。
前回の芸術祭から設置されている大巻伸嗣の「Liminal Air –core-」が朝日に輝いていました。

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この日前半の目的地は犬島です。
ただし高松からこの島までは直通の船がないので、一旦直島に向かわなければなりません。

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直島ゆきのフェリー乗り場には、すでに乗船を待つ人々による長蛇の列がありました。

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船に乗り込み、デッキから周囲を見回していると、パンダが大きくあしらわれているフェリーを発見。とても目立っています。どこにいく船なのでしょうか。

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出航は8:12。とりあえず操舵室にかぶりつき。

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それから外に出て、ディティールも観察。
こちらによると、大三島で作られた船とのこと。

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大三島はこの前年に、「伊東豊雄建築ミュージアム」に行くために訪れたことがあります。
瀬戸内には本当にたくさんの島がありますが、その中で自分が訪れたことがある島の名前を目にすると、ちょっとだけ嬉しい気分になりますね。
その時の記事はこちら


旅客船以外の船の様子も間近で見ることができます。

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高松を出て50分ほどで直島の宮浦港に到着。
桟橋の先に据えられた草間彌生の赤いカボチャは、この島がアートの島であることをステートメントしているかのようです。

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接岸後の行動はスピーディーに行わなければなりません。
というのは、ここでの犬島ゆきの高速船への乗り継ぎ時間が非常にタイトであるため。しかも定員が限られているからです。この航路は1日3往復しかないので、乗られなかったら大変!
(前回の芸術祭では、乗り継ぎの際に船に乗れず、中継地の島に取り残されてしまうこともありました)

ドキドキのなかターミナルでなんとか整理券を入手!
そして大急ぎで犬島ゆきの桟橋まで。

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船の名前は「サンダーバード」号。

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出航すると、船は激しく飛沫を放ちながら爆走。
只見線のキハの音をさらに強烈にしたような音に興奮です!

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出航から約1時間で犬島に到着。

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さて、この日のアートめぐりがスタートです!

(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、訪問1日目。

本島の笠島地区で偶然みつけた「gallery ARTE(東北×せとうちギャラリーカフェ)」。
こちらでは、芸術祭とは別に小さなプロジェクトをこの島で展開しているとのこと。

ついでにその作品も1か所だけ訪ねて行ってみることにしました。

会場となっているのは長徳寺というお寺。

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お寺の裏手に立体作品が展示されていました。

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こちらでは冷たい甘酒を飲みながら、住職さんと談話。長徳年間(995~998)の創建と伝えられるお寺の歴史について、お話をいただくことができました。


船の時間が近づいてきたためお寺を辞し、自転車に乗って港まで。
その途中にはキバナコスモスの花畑がありました。夕暮れ時の空のもと、なんだか切なくなるような眺め。

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帰りの船で、隣り合わせたのは丸亀市の職員さん。
船尾につけられた旗を撮ろうとしていると、気をきかせてそれを広げてくれました。

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丸亀までの航海中は芸術祭について語り合わせていただき、貴重な時間となりました。

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この日の夜は、その方ご推奨の「一鶴」というお店へ。
頂いたのは丸亀名物の骨付鶏です。

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宿のある高松までは「快速サンポート」で。

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モノレール、飛行機、バス、電車に船…様々な乗り物も楽しめた一日でした。


(つづく)









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瀬戸内国際芸術祭、訪問1日目。

本島(ほんじま)の東側にある笠島(かさしま)地区には古い町並みが残っています。
こちらもぜひ見てみたいと思い、向かってみることにしました。

途中、磨崖仏がありました。
怒髪と剣…不動明王のようです。

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瀬戸大橋を右手に実ながら気持ちよくサイクリング。

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…していると、軒先にたくさんの猫がいる家を発見。
しかもべっぴんさんな猫ばかり。


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たまたまおのお宅の奥さんが出てきたので、猫談義をしていると、この先の港には「お父さん猫」がいることを教えてくれました。


そして港へ。

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彼かしら?こんにちは。

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もうすっかり岩合光昭さんの気分です。


つい時を忘れて眺めてしまいそうになったので、いかんいかんと思い、その先にある景観保存地区へ。

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が、ここにも猫たちが待ち構えておりました。

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路地を占領していましたが、可愛いので許してあげましょう。
とても寛いでいる様子です。


ここには現代作家を扱うスペース「gallery ARTE(東北×せとうちギャラリーカフェ)」もあり、そこの方とも対話。お話をしていると、すぐそばにある空き家を使ったインスタレーションもあるということで、特別に見せていただくことになりました。


案内されて、細い道を進みます。

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鍵を開けて、ある家屋のなかに入ってみると、そこには暗い空間のなかに光る物体が吊り下げられていました。

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それはふたつの眼にも、雲のようにも見えました。
私が連想したのは萬鉄五郎の「雲のある自画像」。
鑑賞者の立ち位置によって見え方が変わっていくのもまた、ライブ感があって良い。


すこし時間がたって目が慣れてくると周囲のものが見えはじめました。そんなふうにして建物が作品の要素の一部として鑑賞者の意識の中に進入してくる様子が、いかにも現代アートな感じで気に入りました。


芸術祭にエントリーしている作品ではありませんでしたが、この島の中で見た作品のなかで最も良かったもののひとつとなりました。足を延ばしてみると、いいことがあるものですね。


(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭、訪問1日目。

本島(ほんじま)の泊地区から笠島地区に向かう途中で、ある建築プロジェクトの現場に立ち寄りました。


齊藤正×続・塩飽大工衆による「善根湯×版築プロジェクト」。
場所は瀬戸大橋が見える海辺です。


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ここには丸亀市の職員の方がおられて、作品について説明してくれました。

この島はこのほかにシーボルト・ハウスや来迎寺でも丸亀市の職員の方が対応してくれましたが、親切でありながら決して押しつけがましくない感じはみなさん共通。どうしたらそろいもそろいこのような雰囲気が出せるのかと不思議な感動を覚えるくらいでした。


このプロジェクトは、島に伝わる建築技法を使って人々が楽しめる施設を造ろうというもの。私が見た時にはまだまだ途中の段階でしたが、なかでも興味深かったのはピンポールカメラとシャワールームを掛け合わせたスペース。扉をとざして真っ暗にすると、壁面に穿たれたピンホールから入ってきた瀬戸内の風景が、反対側の壁にさかさまに映ります。シャワールームとして真っ暗すぎるのはいかがなものかというコメントは差し置いて、「カメラの中で裸になる」という体験は、未経験の刺激を与えてくれるに違いありません。


ちなみに、この施設にはいずれピザ釜も作られる予定とのこと。
シャワー、ピザとビール!瀬戸大橋を眺めながら!
想像するだけでうきうきします。


完成したら、かならず訪れなければなりません。


(つづく)









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瀬戸内国際芸術祭、訪問1日目。
本島(ほんじま)、14時過ぎ。

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泊地区の一角を徒歩で回遊したあとは、ふたたび自転車に乗って次のエリアへ向かいました。

その道のりは5分ほどでしたが、途中でたびたび面白いものを発見。

例えば、正面観100%のイラストが描かれた看板。
オートバイだけでなく、背後の車の表現にも注目です。

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民家の壁に貼られたお品書き。

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バイリンガル表記で、ちょっとインド風のデザインです。カレーライスの「カ」だけ色が違うあたりもいいですね。あと「肉味噌~」を白い文字にしているのもこれまた秀逸。この一枚が無ければ全体的にガチャガチャしていると思う…やるなあ!


そんな風によそ見をしながら走っているうちに、まもなく作品ポイントへ到着。


こちらの作品は力五山(加藤力・渡辺五大・山崎真一)による「つなぐ」。
惣光寺とその周辺に広がる作品です。

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このお寺、創建は729年とのこと。
最近は人の手が入っていなかった状態だそうで、草が生い茂る境内には諸行無常感が漂っていました。浮遊しているかのように据えられた赤いバルーンがさらに非現実感を強めて、ちょっとシュルレアリスム的な眺めとなっていました。


訪問者はそこに設けられた橋を渡って奥へと誘導されます。

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その先には銀色の箔に包まれたお堂がありました。

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(どうやらこのお堂とバルーンの部分は、加藤力が2010年に鎌倉の長谷寺で発表した作品の系譜に連なるもののようです-その時の記事はこちら


一方、境内にある建物の中からこの庭を眺めてみると、それはまるで舞台装置のようにも見えてきました。

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秋草との組み合わせは一層もののあはれな感じを増幅させていました。この季節にこの作品を見られて良かった…と根拠なく満足。


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惣光寺のそばには、かつて島の自治の拠点となっていた「塩飽勤番所」があり、内部を見学することができました。こちらには歴史資料も数多く展示されており、咸臨丸の乗組員が持ち帰った品々などを見ることも出来ました。

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地域の歴史を学んだところで、こんどは島の東側にある笠島(かさしま)地区へ。


(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭の旅、初日最初の訪問地は本島(ほんじま)。


「シーボルト・ガーデン」で蚊に刺されまくったあと、坂道を下って自転車をピックアップ。
風を切って気持ちよく走っていると、大きな看板を掲げた民宿が目に入ってきました。

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「本島民宿花壇」

…民宿なんでしょうか。花壇なのでしょうか。たぶん民宿なのでしょうけど。


島のバス停。「木鳥神社」。
一旦自転車を置いて、ここからは徒歩でまわりました。

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食とアートによるプロジェクト、EAT&ART TAROの「島スープ」は残念ながら時間外。
頂きたかった!

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このあたりは割と民家が密集しているエリア。

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その随所に設置されていたのが村尾かずこによる「漆喰・鏝絵かんばんプロジェクト」です。

これは島に伝わるお話や記憶をアーティストが聞き取り、それを図案化したもの。そのデザインは皆ほんわかとした雰囲気で、「かんばん」という名前とはうらはらに、情報伝達のという役割が与えられたモノというよりも、むしろそれ自体が愛玩の対象となるような感じ。

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この作品をたずねて路地をめぐっていると、郷愁を感じさせるディティールにもしばしば出会いました。作品を探しあるくことで、こちらの感覚も鋭敏になっていたのでしょう。

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お食事処の板塀に貼られた魅力的な品書き…「鯛カツ丼」「たこめし」など。

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この時は昼食後だったので立ち寄ることはできませんでしたが、いまでも写真を見るたびにその字づらが醸し出す吸引力によろめきそうになります。


一瞬だけのアーケード。
人影は無し。

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森節子の「廃墟と再生の中で」もこの地区にありました。
これは築70年の民家をベースとした作品。

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内部には土足で入るようになっていました。

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作家は2011年からこの島に通って制作活動を続けてきたとのことですが…

結果的にこれは、今回の芸術祭のなかで最も残念に感じた作品となりました。申し訳ないけれど、学園祭のお化け屋敷みたいな印象しか残らず…自分が住んでいた家がこんなふうになってしまったら、正直泣きたくなると思う。

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若干モヤモヤとした気持ちになりながら、続いて向かったのは本間純の「耳鳴り」。
来迎寺というお寺の中にある作品です。


石段というアプローチは、都市部にすむ人間にとってはそれだけで非日常的。

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少し上っただけで、民家の屋根のつらなりの向こうに海、そして島影が現れました。

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展示空間に入ると、畳敷きの広間の床面に平たいものが広がっていました。
ガイドによればそれは「彫刻」とされ、「見えない海図」であるとも記されていますが、
私にはそれが朽木のようにも、浮雲のようにも見えました。

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作品を見た後で、あらためてお寺そのものに興味を向けてみると、そこには鎌倉時代の阿弥陀如来像が置かれていることが判明。それ自体は暗い空間のなかに安置され、はっきりとした姿では見ることができませんでしたが、その分、先ほどの作品のゆらめくような造形がこの仏様のテリトリーを表現しているようにさえ思えてしまったのでした。

もしかしたらそれは、「来迎」寺という名称に想像力が刺激されたゆえかもしれません-来迎とは、阿弥陀如来が私たちの生活圏にまでやってきてくれるということを表している言葉ですから。

ここで対応してくださったのも丸亀市の職員さん。その方は隣の高見島の出身だそうで、私が船の運休の影響で高見島には訪問できないことを告げると、たいへん残念そうな様子をみせ、ふるさとの島の良さを語ってくださいました。その様子にちょっとキュンとしてしまったのはここだけの話。

しかしながら、ふたたび石段を降りたところで発見したのは、朽ちた案内板。「来迎時」の札は地面を指示していました。これが歴史あるお寺の、21世紀の現実なのかもしれません。

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再び歩きはじめると、「漆喰・鏝絵」の作品がひきつづき登場。

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なかには色を塗っていないものもありました。

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その未完の気配に、今後もこの連作が増えていくような気がしました。



(つづく)










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瀬戸内国際芸術祭をめぐる2泊3日の旅。

この旅で最初の島、本島(ほんじま)には12時半頃に到着。
さっそく港でレンタサイクルを借りました。

その時の係員さんの説明がとても親切で、ここでも四国に来たことを実感。
本当にこの地は、あまねく旅人に優しい。

自転車をこぎ出して1分も経たず現れたのは、石井章による「Vertrek「出航」」。

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本島は、歴史的には「塩飽(しわく)水軍」の拠点として知られています。江戸幕府の船として初めて太平洋を横断したことで知られる咸臨丸には、この島ゆかりの乗務員が多く乗っていたとのこと。この作品はその船をモチーフとしたもので、Vertrekとは咸臨丸が作られた国・オランダの言葉で出発・出航という意味です。


作品の向こうには今自分が乗ってきたばかりの船が見えました。
その眺めは、まるで過去と現在、あるいはモニュメンタリティとリアリティが層状に重なり合っているかのようでした。



そのちょっと先には、岩田草平×プロマイノリティの「New Port -青い香辛料-」がありました。これはインドの先住民族サンタルの建築工法と、島に伝わる技術を組み合わせ、竹と土による建物を創るプロジェクトです(プロマイノリティ、という言葉はちょっと「プロ市民」みたいな印象があって、すこし警戒してしまった…)。

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訪問時は、ちょうどサンタルの人々が公開制作をしている時期にあたり、彼らは強い日差しのもとで黙々と作業をしていました。その褐色の肌と、瀬戸内の青い海が美しいコントラストとして記憶に刻まれました。

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さらに海沿いの路を進んでいくと、作品のポイントを示すサインと、ベンチが現れました。

そこから少し山に入ったところには、カリン&パット/川口豊・内藤香織による「シーボルト・ガーデン」があり、自転車に乗ってきたひとはここから徒歩で向かうことになります。

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ちなみにこのカラフルなベンチは、丸亀競艇の廃材を利用したものだそうです。

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道を挟んで反対がわの海辺にはさりげなく作品が佇んでいました。
すぐ近くにキャプションが見当たらなかったので、もしかしたら「遠くに設置されている作品のサテライト的なパーツ」なのかもしれない…と判断。

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そして「シーボルト・ガーデン」に向かって坂道を上ります。

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10分ほど歩いたところで、黒い外観を持つ建物に到着。
現場スタッフとして出迎えてくれたのは丸亀市の職員の方でした。

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内部はもともと住空間だったようで、小さめの間取り。
各部屋に、木箱や映像、蔓などを使ったインスタレーションが展示されていました。

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アーティストのうち、カリン&パットの二人はいずれもオランダ人。オランダらしい図像も散見されました。

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そしてシーボルトといえば紫陽花の花。

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野外にはこの科学者ゆかりの植物が植えられているほか、元々植えられていたとみられる果樹も多くみられました。

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また、立体作品も設置されていました。

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どうやら先ほど海辺で見た作品は、シーボルト・ガーデンの一部であったようです。もしかしたらそれは、日本とオランダをつなぐ「海」のきわに据えられた、この作品におけるイメージの桟橋のようなものなのかもしれません。


アメリカ、インド、そしてオランダ。
この島の散策の序盤に訪れた作品はいずれも異国に因みつつ、同時に、島とそこをつなぐ「海」という存在を強く感じさせるものでした。


(つづく)










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